毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今更ながら、リフレーション的金融政策の意味とは?~『リフレが日本経済を復活させる 』岩田規久男×浜田宏一×原田泰(2013)

リフレが日本経済を復活させる

なぜデフレは貨幣現象なのか、なぜ金融政策によってデフレから脱却できるのか、なぜその過程で生産と雇用が増大するのか?(2013)

 

デフレの本質~浜田宏一

長期的に見れば、ミダス王の物語が示すように、黄金ないしお金は私たちの人生を永遠には幸せにすることはできない。けれども短期的には、物価と賃金は硬直的か、少なくとも粘着的である。現実的な次元では、フィリップス曲線が示しているとおり、デフレは失業を増加させる。(長期的には、ケインズが言ったように、われわれはみんな死んでしまう)。労働者の雇用を確保する上で、金融政策は極めて重要な決定要因である。(23ページ)

貨幣の中立性とインフレーション~矢野浩一氏

(貨幣の中立性の)性質が長期において成り立たなければ、貨幣量の調整により、発展途上国が先進国なみになるように経済を発展させることができることになる。それは不合理だと考えられるため、長期において必ず成り立たねばならない性質だと言える。・・・(貨幣成長とインフレーションの関係は)相関を表すものであるから因果関係を述べることはできないが、マクロ経済では「高い貨幣成長率が高いインフレ率を引き起こす」と考えられている。・・・まとめると長期的においては貨幣量が物価水準に影響し、なおかつ経済の実質変数(潜在GDPや自然利子率)には影響を及ぼさないという点についてはマクロ経済学者間ではほぼ合意が取れている。しかし、短期においては「貨幣量がどのように物価水準や実質変数に影響するか」については論議が多い。(86ページ)

長期か短期か?~田中秀臣氏(Wikiより引用)

潜在成長率を高めようと主張するが構造改革派であり、潜在成長率自体は減っていないと主張するのがリフレ派である。構造改革派は不況の原因は日本経済の潜在的な能力の低下が原因と考えるが、リフレ派は日本経済の潜在的な能力は低下しておらず、需要を増やせば以前と同じ能力を発揮することができると考える・・・構造改革派はイノベーションは不況の中から生まれるとしているが、リフレ派は不況は淘汰が進みますます悪化させるだけであり、需要が生まれる中でイノベーションが生まれるとしている。

リフレが日本経済を復活させる

Wikiによればリフレ派とは「政策の主眼は政策レジーム・チェンジを通じて期待インフレ率を上昇させ、期待実質金利を低下させること。予想インフレ率に働きかける金融政策によってデフレからの脱却を達成し、穏やかなインフレ率をめざす。」と定義される。

マクロ経済学者の間では貨幣に中立性とインフレーションの存在については意見が一致しているという。長期的に見れば貨幣を増加させても景気には関係ないのである。短期的にみれば貨幣と実物経済とリンクする雇用ではその調整スピードが違うために、インフレにより失業を減らすことが可能であると統計的に主張する。

短期的にでも失業を減らすことに意味があるのか、無いのか?

長期的な視点に立てば構造改革派の主張が通り、短期的な視点にたてばリフレ派の説得力が大きくなる。

この議論を通じて、長期的な視点と短期的な視点による意見の相違は折り合うことが無いということが明確にわかった。イノベーションは不況の中から生まれるのか、需要好調期にイノベーションが生まれるのか、結論は存在しない。イノベーション景気動向とは関係ない所から生じるものであり、イノベーターはマクロ経済学者が分析できるフレームワークの外側に立脚している。

人間が持つイノベーションへの熱意、意欲はマクロ経済とは別の所にある。

蛇足

他国通貨との通貨膨張速度の差は実物経済に大きな影響を及ぼす。従ってリフレ的政策による円安誘導には手段と目的の整合性はある。

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