もしガンの告知を受けたら、思い出すこと~『実践 行動経済学』R・セイラー+C・サスティ―ン
セイラー氏は行動経済学の研究家、 本書のテーマ「ナッジ」(NUDGE)は、「ヒジで軽く相手をつつくように」、適切な選択を促したり、危険を回避させるしぐさである。
(2009)
我々の限界
限界合理性
物事が複雑になると、(感情で動く我々、)ヒューマンは失敗しがちになる。
自制心
デザートを載せたカートが近くにくると、(感情で動く)私たちヒューマンはた
いてい降参する。(375ページ)
社会的影響
社会的影響は甚大な力を生み出す危険性があり、・・・あなたが知っているすべて
の人が地元のレストランを最高だとほめていても・・・最悪の料理を食べ(る可能
性を排除できない)(378ページ)
ケース①ガンの治療法選択
あなたは前立腺ガンと診断されたと告知され、外科治療、放射線治療、“待機”療法(つまり、いまは何もしないということ)の3つの選択から一つを選ばなければならないとしよう。こうした選択を選んだ結果生じる可能性がある治療の副作用、生活の質、余命などは複雑に入り組んでいる。・・・このシナリオには恐ろしい事実が二つある。
第一に、ほとんどの患者は医者にガンを告知されるまさにその場で行動方針を決める。第二に、治療方法の選択は、主治医のタイプに大きく左右される。(外科治療を専門とする医者もいれば、放射線治療を専門とする医者もいる。待機療法を専門とする医者はいない。十分に活用されていないのではないかと疑われる選択があるが、それはどれだろう)(152ページ)
ケース②損失回避性
私があなたに賭けをもちかけたとしよう。コインの表が出るとXドルもらい、裏が出ると100ドルを払う。Xドルがいくらなら賭けに応じるだろう。ほとんどの人は200ドル前後の金額を応える。それは200ドル手に入れる期待と100ドルを失うリスクがちょうどつりあうことを暗に意味する。・・・このように、人には自分がいま現在持っているものに強く固執する傾向がある。(61ページ)
ケース③便益とコスト
自制心の問題が生じる可能性が最も高いのは、選択と結果にタイムラグがある場合だ。一方の極端にあるのが「投資財」とでもいえるものである。運動、歯のフロッシング、ダイエットなどがこれに当たる。投資財の場合、コストはすぐに発生するが、便益は後から生じる。ほとんどの人はやる量が少なすぎるという過ちを犯す。・・・もう一方の極端にあるのが『罪深き財』とでもいえるものである。喫煙、アルコール、ジャンボチョコレートドーナッツがこのカテゴリーに入る。私たちは快をいま得て、ツケを後で払う。(123ページ)
どういう場合に判断を誤るか?
(感情によって誤った判断を犯しかねない我々に)良いナッジ(最適化された環境による選択サポート)がもっとも求められるのは、選択の結果が遅れて現れる場合、選択するのが難しく、まれにしか起こらず、フィードバックが乏しい場合、選択と経験の関係が不明瞭な場合ではないかと思われる。(129ページ)
実践行動経済学
我々は感情バイアスにより誤った判断を行う。がんの告知を受けた場合、切迫した感情下で比較の難しい判断をしがちである。客観的にみれば、即断せずセカンドオピニオンを貰って選択するだけでより良い結果になる可能性がある。
そこそこの給与を貰っていると転職しない。今の収入の2倍貰わないと転職を受けないのであれば、1倍と2倍の間の転職チャンスを失っていることになる。
我々はメリットを先に欲しがり、コストは後払いにしたい。チョコレート1個のメリットとチョコレートを食べ続けたときのコスト=肥満など、は判断が極めて難しい。
限界合理性、弱い自制心、社会的影響への無抵抗など、我々は弱い存在である。だからこそ我々は感情の動きを知り、感情を活用する必要がある。例えば我々は習慣になると少しぐらいいやでも、それをやり続けるインセンティブが働く。
蛇足
良い習慣が良い結果をもたらす。(真実は常につまならい)
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