毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

本書の帯「カモなれるな!」も感情を使っている~『感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか』堀内進之介氏(2016)

 感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか (集英社新書)

堀内氏は政治社会学の研究者、 日常生活の様々な場面において、理性よりも「感情」に訴える主張が注目を集めている。(2016)

ナッジ(nudge)

「ヒジで軽く突く」という意味で、行動経済学の分野では「科学的分析に基づいて、人間に『正しい行動』をとらせようとする戦略」として知られています。

そもそも我々は感情的

私たちの注意力には限りがあるし、意思は、そもそも怠け者だ。だからカタルシスを得られる感情的発露の方が、忍耐を強いられる理性的判断より優先されてしまう。私たちはもともと感情的な動物だから理性的になるには努力が必要なのだ。(12ページ)

感情を利用したマーケティング

製品の機能やブランド力だけでなく、ユーザーの人間としての評価が高くなるようにイメージが現代の企業に要求される。企業も個人も「自分らしさ」を求められるようになったのだ。直接商品を宣伝しない企業のブランドイメージCMでは、この特徴がよく現れる。

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【号泣】感動の結末に涙が出る! タイの通信会社「トゥルー」のCMが話題! - YouTube

感情は、タイの通信会社のCMが日本でも話題になるだけのパワーを持っている。(私も感動した!)

 ナッジを利用する

行動経済学では、多過ぎる選択肢を体系化して選びやすくする技術を指す言葉として知られる様になった。そして私は本書において、ナッジを、(感情に訴えて)もっともらしいだけで中身のない論議への対策として論じようと思う。・・・(外部から感情に訴えられる仕掛けがなされる今日)感情的であることと同時に、それを自覚することであり、無自覚にならないための予防をすることだ。・・・私がナッジを利用できると思うのは、人びとが日々の営みから少しでも解放され、市民として振る舞う可能性に対してである。(31ページ)

環境を変えること

生産性に関する考察で世界的に有名なデビッド・アレンは「やるべきことが山のようにあったとしても、頭をすっきりさせつつ、リラックスしながら高い生産性を発揮して行く『やり方』がある」という。彼の「やり方」は、「今やらないといけないこと、あとでやること、いつかやる必要のあること・・・大きなことも小さなことも、すべてを頭の中からいったん吐き出し、信頼できるシステムに預けること」だ。」・・・たとえば、次の日の朝に絶対に持っていくのを忘れてはいけない書類を前夜に玄関に置いておく、といったことで構わない。目に付きやすい場所に置いておきさえすれば「書類を持って行く」ということを覚えておかなくても、翌朝、玄関で「ああ、そうだった」と思い出して、持って行くことができるはずだ。(219ページ)

感情でつられる人々

本書で堀内氏は我々は理性を思ったほど使っていない、と言う。ナッジ上手に利用することで環境をほんの少し変えるだけで理性が働かすことができる。マーケティング、組織運絵、政治において感情に訴える手法が多様されている今日、ちょっと理性的になる習慣を進める。難しいことではなく、例えば「自分の長期的な目的を紙に書いて、それを1日5分でいいから見直す。その為の環境を整備する戦略=ナッジを取り入れる。」ことを進める。

我々は感情で釣られる。大部分の場合それは現状維持という結果をもたらす。それは十分に良いことなのだが、現状にない目標を、日々5分注意を振り向ける環境があれば、そこには理性を働かせる余地がある。理性が不十分なのではなく、我々は思ったほど理性を使っていないということである。

蛇足

筆算は、紙に答を記録して環境を変える、ナッジの一つ

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