家庭と仕事のどっちが大切か?~『使える 弁証法』田坂広志氏(2005)
田坂氏は文筆業、「ヘーゲルの弁証法」は、日々の仕事の役に立ち、現実の問題に使えるのです。(2005)
企業経営にとっての矛盾、利益追求か社会貢献か?
この「利益追求」と「社会貢献」は、しばしば、経営の現場においては「矛盾」として現れてきます。端的に言えば、「価格」がそうです。
安い価格で販売すれば、顧客に喜ばれ、社会に貢献することができます。しかし、その結果、企業としての利益は小さくなってしまいます。逆に、独占的な市場であることは、ときに「反社会的なビジネス」との批判を受けるkとおになります。(162ページ)
「止揚」とはドイツ語で「アウフヘーベン」のことであり、ヘーゲル哲学の中心となる難解な概念です。ここでは、誤解を恐れず、敢えて分かりやすく説明しましょう。では、止揚とは何か。
それは互いに矛盾し、対立するかに見える二つのものに対して、いずれか一方を否定するのではなく、両者を肯定し、包含し、統合し、超越することによって、より高い次元のものへと昇華していくことです。
経営における止揚
(企業経営における)二つの矛盾を「止揚」するとは、「利益追求」か「社会貢献」かの一方を肯定して「割り切る」のではなく、この両者を肯定し、包含し、統合した企業を目指すことです。
例えば松下幸之助が、その経営哲学において語った言葉が、まさに、この「止揚」です。
「企業は、まず、本業を通じて社会貢献する」
「利益とは、社会に貢献したことの証である」
「多くの利益が与えられたということは、
その利益を使ってさらに社会に貢献せよとの、天の声だ」
この松下幸之助氏の言葉は、「利益追求」と「社会貢献」というお互いに矛盾するかに見える二つについて、それを「利益追求か、社会貢献か」という二項対立として捉えるのではなく、まさに両者の矛盾を「止揚」した経営哲学として、深みをもって語っています。(166ページ)
使える弁証法
弁証法とは対立する二つの概念を更に高次の視点から一つに統合することであった。
経営で良くいわれる利益追求か、社会貢献かの例えによりそれが明確になる。利益追求と社会貢献を両立さえる企業経営こそが求められている。これは企業経営において株主と従業員のどちらが大切か、あるいは既存事業の拡大と新規事業への投資のどちらが適当か、という問いかけも同様の構造を持つ。これは短期的視点と長期的視点と言い換えてもいいであろう。
企業経営とは二つの矛盾する概念を一つに統合することによって成立している。
それでは家庭と仕事とどっちが大切でしょうか?
この二つを統合する視点を探し続けることが重要なのであろう。
蛇足
弁証法とは逆もまた真なり、ということ
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