毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界人口の増加率ピーク2%はいつ頃だったか?~『ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史 』大塚 柳太郎氏(2015)

ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史 (新潮選書)

大塚氏は人類生態学の研究家、何が人類をここまで激増させたのか? 20万年前、アフリカで誕生したわれわれは穏やかに増えていくが、つい最近、突然の増加をみた。農耕が始まった約1万年前のわずか500万人が、文明が成立し始めた5500年前には1000万。(2015)

 

 

ヒトは異端の存在

ヒトは異端の存在です。多少の例外はあったとしても、地球上ほぼすべての地域で、人口は増加し続けてきたのです。その大きな理由は、食物の入手効率を高めるなどして、面積あたりの人口すなわち人口密度を高めることに成功したのです。移住によって、1万年前には地球のほぼ全域を生息域に組み込んだのです。(10ページ)

地球の定員は120億人?

人口支持率の推計は、古くから多くの研究者によってなされてきました。アメリカの数理景物学者ジョエル・コーエンが、1995年に出版した「地球は何人の人間を支えられるか」と題する著作で、それまでに行われた65にのぼるすべての研究を整理しています。

多くの研究は、地球上における食料あるいは食物エネルギーの最大可能収量を推計し、人口支持力を算定しています。問題は、算定された人口支持力が、10億人から1兆人まで大きく異なることです。その主な理由は、ヒトがどのように生きるかにもかかわるものの、技術革新によって向上する食料生産性の予測にバラツキが大きいことです。…コーエン自身は、人口支持力の推計が困難なことを認める一方で、半数以上の研究が40~160億人と推計したことに着目し、それらの平均値が約120億人になると述べています。120億人という人口が注目されるようになったのは、国連人口部が社会経済的な条件を考慮せずに、年齢別死亡率や年齢別出生率などの人口要因だけから推定した最大の人口とほぼ一致するからです。(239ページ)

増加率がピークだった20世紀後半

世界人口は、1950年に25.3億人、2000年に61.2億人でした。20世紀後半の50年間に、2.4倍以上になったのです。この増加加速度は当然ながら、それまでのベースを大きく上回りました。…1965~70年が(人口増加率が)2%を超え、ピークだったことを示しています。2%という年増加率は、人口が倍増するのに35年もかからないペースです。言い換えると、ヒトの1世代にほぼ相当する期間に人口が倍増したことを意味します。(225ページ)

世界人口変遷は4つのフェーズ

 

本書によれば世界人口は、以下の4つのフェーズに分ける。

  1. ヒトがアフリカで穏やかに人口を増加させた時期
  2. ヒトがアフリカから西アジア、そして地球全域に移住した時期。この時期の終盤の1万3000年前には人口は500万人~800万人で、野生動植物を食物とする限界に達した。
  3. ヒトが定住生活をはじめ農耕社会に移行し、その後南北アメリカへのヨーロッパ人進出など移住が活発化する。この19世紀末に世界人口は7億2000万人。
  4. ヨーロッパから始まった産業革命と人口転換(多産多死→多産少死→少産少死に移行すること)が世界中に広がっていく現在までの過程。
本当に世界人口は120億人なのか?

 

世界人口の4つのフェーズを俯瞰してみると、前のフェーズとあとのフェーズの間にはパラダイムシフトがありそれは当人たちが気づくことなく発生したことに気づく。①から②に移行するとき、ヒトは世界征服!を目標に移動した訳ではない。②から③も人口増加を目標に、農耕社会に移行したからではない。人口増加はあくまで結果に過ぎない。

国連統計によれば世界人口は120億人がピークだという。現在の72億人から見れば約70%増えることになる。結果だけ見れば70%増は大幅増加ではある。がしかし、私には人口爆発というには控えめな状況に見える。

世界人口の増加率のピークは1965~70年の2%、ちょうど日本の高度成長期にあたる。72億人から120億人へのインパクトを感じないのは我々の日常が低成長だからなのであろうか?確かなことは、今までと同じようにフェーズの移行は後からしか分からない。120億人にも増えるのか?120億人にしか増えないのか?

蛇足

世界の定員は本当に120億人?

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