宇宙誕生におけるプランク時間(10の−44乗) とは何か?~『戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!』戸塚洋二(2008)
故戸塚洋二・東京大特別栄誉教授物はスーパーカミオカンデ素粒子の一つ「ニュートリノ」に質量があることを示す「ニュートリノ振動」を発見した。2008年死去、同じ研究チームに所属していた梶田隆章氏が2015年ノーベル賞を受賞。(2008)
自然を記述する3つの数量
自然を記述するのには3つの数量が必要です。時間を表す量、長さを表す量、質量を表す量の3つです。これだけで十分です。私たちは、3つの基本的な定数を知っています。ニュートンの万有引力(G)、光の速度(C)、プランク定数(h)です。…この3つから、時間、距離、質量の基本的数値を表すことができ、その具体的な値を求めることができます。(193ページ)
プランク時間 5.39116(13)×10−44 s
プランク時間は、プランク長に等しい距離を真空中における光速度で通過するのに必要な時間である。ビッグバンが起きてから 1 t P 以内のことをプランク時代という。従って、プランク長は、この時代の終末の宇宙の大きさといえる。
量子力学における不確定性原理との関係上、プランク時間が測定することのできる最小の時間であり、それゆえにこれが物理現象の最小時間単位である。(Wiki)
プランクという名のついた基本定数を基準に取ると、われわれの世界とはまったくかけ離れた、極端に短時間の、極端に短い長さだが、非常に大きなエネルギーを持った世界になります。(197ページ)
プランク時代から宇宙のインフレーションへ
インフレーションが起きると、プランク長さしかなかった宇宙が、途方もない膨張(インフレーション)によってメートルの単位で測れるような巨視的な量になることが可能です。…インフレーションは、宇宙の内部にもともとあったプランクエネルギーも薄めてしまい、そのため、エネルギーに働く万有引力が弱まり、宇宙は膨張を始めます。こうなればしめたもので、宇宙は勝手に膨張を始め、時間のスケールも、秒で測れる長い時間まで宇宙が生き残ったのです。(201ページ)
kenbunden.net -戸塚洋二の科学入門-
戸塚教授の「科学入門」
故戸塚洋二は物理学の「実験屋」を自称。スーパーカミオカンデで太陽からのニュートリノ観測のリーダとして、ニュートリノに質量があることを世界で初めて観測した。
宇宙の誕生からインフレーションが始まるまでの時間がプランク時間でもある。プランク時間は10の-44乗という非日常の、短い時間の単位である。宇宙誕生からインフレーションが始まるまでの間がプランク時間と考えると、ただの数字から意味のある数字に変わる。量子物理学の世界と宇宙はつながっている。
蛇足
プランク時間の別の意味は時間は離散的(とびとも)だということ。
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