毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

不安になることにも理由がある~『不愉快なことには理由がある』橘 玲 氏(2012)

不愉快なことには理由がある

橘氏は作家、脳科学や遺伝学、行動経済学ゲーム理論などの学問と融合し、急速に発展した現代の「進化論」。(2012)

 

 

思い悩むシミュレーションが心の本質

 

進化心理学では、キリンの首が長くなるような身体的特徴だけでなく、人間のこころや感情も、より多くの子孫を残すように進化してきたと考えます。

 

なぜ私たちがいつも思い悩んでばかりいるかというと、新しい事態に遭遇すると、こころという「シミュレーション装置」が無意識に駆動しはじめるからです。・・・シミュレーションで相手の行動を的確に予想できれば、異性の獲得だけでなく、狩りをするのも、敵を守るのも、敵から身を守るのもずっと容易になります。これを「知能」と呼ぶならば、ヒトの祖先は賢ければ賢いほど生き残る確率が上がり、より多くの異性と交尾して子孫をの残せたはずです。(23ページ)

 

人間の本能は悲観論者

 

 

進化心理学によれば私たちの脳は、幸運よりも不安や絶望をより多く感じるようにプログラミングされています。自然淘汰を生き延びたのは、ライオンを前で昼寝をする幸福な楽観論者ではなく、災厄を恐れてあたりを見回しているばかりいる不安神経症の悲観論者でした。遠い将来に遺伝子プログラムを人為的に書き換えられるようになるまでは、私たちはこのやっかいな進化の産物と付き合っていくしかありません。(220ページ)

 

不愉快なことには理由がある。

 

 

近代文明は驚くほどの進歩を遂げたので、解決できる問題のあらかたは解決されてしまいました。だとすればいま残っているのは、問題の解決が新たな問題を生むようなやっかいな問題でしょう。不愉快なことには、すべて理由があるのです。(8ページ)

 

不愉快な真実

 

 

アメリカの所得分布はインターネットのアクセス数の分布とほぼ同じです。だとしたら経済格差は資本主義の失敗ではなく、市場の公平さと効率性の証明ということになります。(234ページ)

 

シミュレーションをトライしてみる

 

進化心理学によれば人間は不安になり易い、だからこそ繁栄してきたと説明する。実は我々が不安に思うことはもはや解決済みの問題が多く、本当に不安に思わなければいけないことはすごく少ない、ということに気づく。

我々は不安になり、多くのシミュレーションをすることで生き残り、更に良い解決方法を模索することを運命付けられている。必要なことは不安でどうしようもなくなる様な、誰も考えつかないアイデアを実際に試してみることしかない。我々は進化してきた長い時間を無視することはできないのだから、不安と同居するしかない。

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