毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

宇宙飛行士とは一生をかけて準備をする職業~『宇宙飛行士が教える地球の歩き方』クリス・ハードフィールド氏(2015)

 

宇宙飛行士が教える地球の歩き方

1959年カナダ生まれ。アメリカ空軍テスト・パイロット学校をトップで卒業し、1992年にカナダ宇宙庁より宇宙飛行士に選出。1995年、2001年、2012年と3度宇宙に行く。2012年のミッションではカナダ人として初めて国際宇宙センター船長を務め、144日間滞在した。(2015年)

 

 宇宙飛行士という職業

 

宇宙飛行士とは、生死をわける重大な局面で、断片的な情報だけですばやく的確な判断を下せる人間のことだ。(37ページ)

 

僕たちはキャリアの大半を地球での訓練に費やすんだ。基本的に、宇宙飛行士というのはサービス業だ。僕たちは公僕であり、国民を代表して困難な任務に当たる公務員なんだ。・・・宇宙飛行士の正式な職務内容は、宇宙で「ヤッホー」と叫びながら個人的なスリルを味わうことあんかじゃなく、宇宙探査をより安全に、しかも科学的に生産性の高見ものにすることだ。自分自身じゃなく他人のためにね。(38ページ)

 

宇宙飛行士の選抜試験をトップで合格する為に必要なこと

 

 

他人から評価される状況に、何の準備もなく望んじゃいけない。それが正式な評価かどうかにかかわらず。いつだって準備は必要なんだ。・・・夜、僕は自室じゃなく、翌日に乗る飛行機の中で勉強した。僕はチェックリストや航行手順をひとつ残らず引っ張りだし、計器パネルを使うまねをしながら、初めから終りまで非行をシュミレーションした。飛行を終えて無事に“着陸”すると、もう一度初めからやり直し、僕は誰に言われるわけでもなく、冷え冷えとした格納庫に何時間も座り、飛行全体をイメージできるようになるまで、繰り替えし練習した。(97ページ)

 

準備がすべてを可能とする

 

 

考えてみると、こういう入念な準備やシミュレーションは、合法的なカンニングに近い。まるで、チェスの試合の最中に、対戦相手に向かって「すまない、これとおんなじボードを持っていって休憩を取りたい。2,3時間で戻ってくるからよろしく」と言って部屋を出て行き、その間にいくつもの戦略を練り、最善策を三つ考えてくるようなものだ。そうすれば相手よりも圧倒的に優位に立てるだろう。(98ページ)

 

宇宙飛行士のミッション

 

 

(宇宙飛行士は)宇宙プログラムをあらゆるレベルで強化し、人類の知識と能力の限界を押し上げるとおう共通の目標に向かって(宇宙プログラムに関わる)全員を一致団結させるわけだ。この目標は、僕たち一人一人よりもずっとデカイものなんだ。(340ページ)

 

一生かかりの準備

f:id:kocho-3:20150621002527p:plainSpace Oddity - YouTube

クリス・ハドフィールド: 宇宙で目が見えなくなり学んだ事は | TED Talk | TED.com

 

ハドフィールド氏は20年間宇宙飛行士の責務を果たした。その20年間のうち宇宙に滞在したのは3回のミッション合計で半年に満たない。残りの19年と半年、彼は準備と他の宇宙飛行士のバックアップを行っていた。半年の為に19年という時間を費やしたのである。

宇宙飛行士は第三者から評価され続ける。評価が悪ければ宇宙飛行士としてミッションには参加できない。それを乗り越えた秘訣は周到な準備に尽きるという。「ちっちゃなことを気にしない宇宙飛行士は死んだも同然」(99ページ)。

これを徹底した宇宙飛行士にのみ人類共通の宇宙プログラムに挑戦する資格が与えられる。そしてそれは地上でも有効な地球の歩き方でもあった。

蛇足

 

宇宙飛行士の資格は準備を厭わない意志。

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