老年の定義はいつ、どうやって決めたか知っていますか?~『日本の地価が3分の1になる!2020年 東京オリンピック後の危機』三浦 展 氏(2014)
日本の地価が3分の1になる! 2020年 東京オリンピック後の危機 (光文社新書)
三浦氏は社会デザイン研究家、生産年齢人口(15~64歳)が減り、経済も下向き、住宅地価格も下がる。(2014)
現役世代は年間100万人減っていく
15~64歳の「生産年齢人口」(つまり、働こうと思えば働ける人の人口、あるいは「現役世代」といった意味である)は、201年には8174万人いたが、2030年には6773万人に減る。20年間で約1400万人、1年間当たり70万人減である。・・・・そして2050年の生産年齢人口は5001万人、人口全体の52%しかいなくなる。(42ページ)
老年人口
65歳以上の「老年人口」(言い換えれば、主として年金で暮らす人の数)は、2010円は2948万人で、人口全体の23%だったが、30年には3685万人、32%に増え、さらに50年には3768万人、39%に増える。(43ページ)
現役世代負担率(本書による定義)
老年人口÷生産年齢人口:生産年齢1人に対する老年人口の割合。一人の生産年齢者が何人の老年者を支えているかを示す。
それでは老年の定義は?
65歳以上を高齢者(老年人口)と定義したのは1960年のことであり、それは当時の男性の平均寿命が65歳だったからである。平均寿命以上に生きる人を、老年人口と読んだのである。(49ページ)
老年人口を75歳以上と再定義をすると
75歳以上を老年人口、20~74歳を生産年齢人口と定義すると、(2050年の)老年人口の人口全体に占める割合は、現状の定義による2013年と同じ値になり、現役世代負担率も、やはり従来の定義による2013年と同じ値になるのである。(48ページ)
住宅地の価格は現役世代負担率とリンク
(92ページ)
住宅地の価格は、この現役世代負担率の上昇と関係する。つまり高齢化が進み、生産年齢人口が減ると住宅価格が下がるのではないかということだ。(84ページ)
人口要因という一要因に着目した「シミュレーション」(試算)である。つまり、その実際にその金額になるというのではなく、人口の減少と高齢化の進行によって、住宅地価格を押し下げる圧力が働くということである。(88ページ)
小死高齢社会の到来
我々は日本の人口が減少を始めたことを知っている。これが10~20年単位で社会にどのようなインパクトを与えるか?三浦氏は現役世代負担率の上昇と住宅地地価の下落がリンクしていると分析する。一方我々は不動産価格が上昇に転じた事も知っている。
65歳以上の老年の定義を75歳以上に変更する事で現状の現役世代負担率を維持できるという。そもそも老年の定義が1960年の平均寿命で決まった事を考えると老年の意味は「社会的思い込み」に過ぎない事に気づかされる。
2015年、地価の上昇は一時的なバブルかもしれないが海外からの観光客の増加による購買力が現役世代負担率の一時的な引上げ要因となり不動産価格にも影響を与えているとも考えられる。
老年という定義は人が決めたものなのであるから、65~75歳の人々、日本以外の人々、を取り込む事で現役世代負担率は上昇させられる事に気づく。地価の維持の為に皆さんもっと長く働きましょう、と主張するつもりはない。少なくとも自分の老年の定義は自分で決めていい。長く働くのも引退するのも、もっと言えば日本に住まない、という事も含め個人の選択である事が重要なのだ。
蛇足
老年とは他人が決めた思い込み。
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