毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

税金を負担せず公共サービスを享受しているのは誰か?~『タックス・イーター 消えていく税金』滋賀 櫻 氏(2014)

タックス・イーター――消えていく税金 (岩波新書)

 志賀氏は元大蔵官僚、タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)と本書タックス・イーター(2014)で、自身の経験に裏打ちされた国際金融、国際税務について説明。

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仕組みは複雑だが、やっている事は単純(米国に利益を持ち込まない、取引にかかる税金を減らす)

 

多国籍企業は税金を払っていない。

 

 

全世界で巨額の利益を上げているこうした多国籍企業は、各国で事業を展開しながらも税を払わず、各国が提供する公共サービスにタダ乗りをしている。その意味において、タックス・イーター以外の何者でもない。しかも、その金額がケタ違いに大きいことを考えれば、「究極のタックス・イーター」と呼ぶべきであろう。(147ページ)

 

アップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトは無国籍企業へ

 

 

いずれの企業も「無形資産」を事業の中核としていることが本質である。たとえばアップルはMACiPhoneなどの製品によってメーカーのように見られているが、必ずしもそうではない。自社の持つ無形資産によって利益を生み出している企業なのである。アマゾン、グーグル、マイクロソフトも同様である。・・・これらの多国籍企業は、自社の無形資産をタックス。・ヘイブンと絡めることで租税を回避している。そして、いずれの企業も全世界が負担している租税の実効税率が著しく低い。・・・これらの企業はいまや「無国籍企業」と呼ぶべきものであり、その規模の巨大さのみならず、個人の生活に深く浸透し、大きな影響を及ぼしている面から見ても、国家を越えるような存在になりつつある。(150ページ)

 

多国籍企業はどうやって税金を回避するか?

 

多国籍企業の方法は①法人税の高い地域にある本社に利益を持ち込まない、②グループ内取引にかかる課税を税金の低い地域で発生する様にする、の2点に集約できる。アップルの本社は米国(法人税約40%)、バミューダ(法人税0%)とアイルランド(法人税12.5%)に無形資産を合法的に移転させている。アップルのグローバルに上がった収益はすべてこの二つの法人にプールされる事になる。本書によればアップルは2013年米国外で獲得して本国に送金されていない所得は1,113億ドル、13.3兆円にも達するという。

多国籍企業は連結ベースの利益などの財務内容を株主から問われる。米国本社の子会社でありさえすればタックス・ヘイブンにある子会社の利益を米国本社に持ち込まなくても連結上は収益として勘案され、株価に反映させられる。多国籍企業の株主もまたこういった税金スキームを望んでいるのである。

もはや米国のグローバルな大企業は公共サービスのコストを負担していないという事を知っておく必要がある。更に言えば我々の税金は我々が享受している公共サービス以外にも充当されているのである。米国だけでなく、世界中で発生しているか、今後発生するであろう状況でもあるのだ。

そもそもどうして税金は高いのか?

 

国家は近代に入ってその役割を増す一方、国民の税負担は重くなっていった、とくに戦争が大掛かりなものとなるに従って、それはますます重くなっていった。・・・また、近代が現代となり、国家が福祉国家となるにつれてこの傾向は増している。(タックス・ヘイブン28ページ)

蛇足

 

税金が高いからタックス・ヘイブンを使うのか、タックス・ヘイブンを使うから税金を高くしないといけないのか?

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