毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

デスクワークに身体性を取り入れる方法はないか?と考え深く深呼吸してみる。~『ロボットという思想』浅田 稔 氏(2010年)

ロボットという思想~脳と知能の謎に挑む(NHKブックス)

浅田氏は認知発達ロボティックスの研究者。ロボットがココロを持ち、私たち人間とコミュニケーションする日はくるのか。学習し成長するロボットをつくりだすことで、人間の知性と身体の驚くべき関係が見えてきた。2010年刊

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子供アンドロイドは補助者の力(=外部性)を借りて歩行プログラムを改善していく。

認知発達ロボティックス

 

 

獲得すべき行動をロボットの脳に直接書き込むのではなく、他者をふくむ環境を介し(社会性)、ロボット自身が自らの身体を通じて(身体性)、情報を取得し解釈していく能力(適応力)とその過程を持つことです(自立性)。(94ページ)

 

ロボットが身体を持つ意味

 

 

(二本足走行ロボットなどは)人間の身体構造(筋肉や感覚器)からうまく学び、それを利用して、それぞれの行動を実現してきたと述べました。そうした発想からロボットをつくった結果、あらかじめ人間が動きを考え、その通り動くようにプログラミングした場合に比べて、事前に決めておく部分の割合が少なくてすみました。これは人間に戻して言えば、行動における脳にあたる部分の割合が少なくてすむということです。身体が脳の代りをしていたと言えるかもしれません。(77ページ)

 

私たちの身体性

 

 

踊りのお師匠さんがいろいろ教えるときに、「わかる人にはわかる」と言います。しかし、わからない人にはわからない。「舞い散る雪を」と言われても、素人には「どないするんです、そんなものを」と言いたくなるのですが、踊りがある程度熟達して、自分の中にレパートリーが存在する人だとそれが何を意味するかがわかってくるわけです。これは理解の本質を表しています。そのときに、私たちの身体性は何かというと、その理解の対象となる行為を自分で実現している経験があることの源泉ですね。それが理解の本質に存在しています。その意味で、ものごとを理解するうえで身体は必要だと言うわけです。(129ページ)

 

「身に付く」の意味

 

認知発達ロボティックスの目的はロボットで人間の仕組みを知る事である。そして 認知発達ロボティックスでは脳に直接プログラムを書き込まない。ロボット自身が自らの身体を通じてプログラミングしていく事を目指している。身体性が存在する事によって脳のプログラム量が少なくて済む。

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f:id:kocho-3:20150308082430p:plain子供アンドロイドの開発 | Asada Laboratory

踊りを例にとれば、経験によって身体にプログラムされた情報と「舞い散る雪を」という情報をリンクさせる事により初めて脳が理解できる事になる。「身に付く」とは文字通りの意味である事に気づく。

我々は学習と身体を結びつける事にもっと注意を払っていい。認知発達ロボティックスの研究はプログラム量という形で身体性の意味を明確にしてくれている。

蛇足

 

デスクワークに身体性を取り入れる方法を考えてみる、

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