毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

他人の行動から見出す、”心”は実在しない~『アンドロイドは人間になれるか』石黒 浩氏(2015)

アンドロイドは人間になれるか (文春新書)

 石黒氏はヒト型ロボット=アンドロイドの研究家、 アンドロイドが教えてくれる「人の気持ち」や「人間らしさ」の正体とは?常識を次々と覆していく鬼才が人間の本質に迫る。(2015)

どうしてアンドロイドを作るか?

僕が目指しているのは、人間らしいロボットの開発である。研究の出発点が「人の気持ちを考える」-つまり人間とは何かを考えることにあるからだ。…僕は、いつか人間を作れると思っている。「人間を工学的に実現する」ことはおそらく可能なのだ。だれもが「このロボットは心を持っている」と思うロボットが実現できれば、それは人間と一緒である。

多様な動きをするロボットに心を感じた!

300以上の動作プログラムをし、動作パターンが次々にどういう順番で発現するかというルールを700以上プログラムした。その結果複雑に、多様に動くロボットが実現された。ここまでやると、自分たちでもプログラムがどう作用するかわからなくなる。…僕らがミーティングをしているとき、突然ロボビー(という名前のロボット)は僕らの音声を認識し、「そうではないよ」と言って手をぶらぶらさせながらどこかへ歩きだしたのだ。(54ページ)

心とは観察する側の問題である

動きが相当以上に複雑なものに対しては、相手のことを一から、すべては理解しきれない。自分の頭の中で完全に再現しきれない、解釈しきれない、理解しきれないほどほど複雑なもの、仕組みがよくわからないくらい入り組んだものが目の前にあると、「こいつは、私の知らないところで勝手居に独立して考え、動いているのだろう」という想像が働く。その浮かんでいた想像に名前をつけずにいられなくなる。それを「心」と呼んでいるのだ。

心とは、複雑に動くものに実体的にあるというより、その動きを見ている側が想像しているものなのだ。(55ページ)

ロボットを人類史で捉えると

 

機械やロボットが人類史において持っている本当の意味は何か。これらは、長い時間をかけて人類が積み重ねてきた歴史、多くの人間がバラバラに行ってきた多種多様な脳の活動を集約し、人を理解しようとすることに通じている。…壁画に始まり、人類はさまざまなものを通じて、ひとりひとりが独立して考えていては克服できなかった問題をのりこえながら、徐々に人の理解に近付いている。(220ページ)

他人の心は実在しない

 

石黒氏は人型ロボット、アンドロイドを開発している。どれだけ人間に迫れるか?石黒氏はその過程で人が心の存在を信じる理由を説明できることに気づく。他人の複雑な動きを見たとき、自分の知識・経験から動作が「心の作用」によると自分で勝手に判断するのである。相手はプログラミングされたロボットであっても、シチュエーションと自分の感情、そしてロボットの動作が共鳴して、意味を見出してしまうのである。

考えてみれば、些細な動きからパターンを見出し、吉報の予兆、あるいは悪い予感と感じる。これなど正に自分の“心”の作用である。

石黒氏はロボットの研究を通じて人間を理解している。

蛇足

 

人の気持ちとは自分の気持ちのこと

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