毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アメリカの富は19世紀に形成され、それが今のテクノロジーと産業につながってる~『アメリカの経済支配者たち』広瀬 隆 氏(1999)

 アメリカの経済支配者たち (集英社新書)

アメリカを動かしているのは、ロックフェラー、ヴァンダービルト、モルガン、アスターといった財閥の遺産相続人たちだ。(1999年刊)

 

アメリカの資産は19世紀につくられた

 

 

 

雑誌“アメリカン・ヘリテージ”によれば、アメリカの歴史上の最大富豪40傑に入るのは、98年の“フォーブス”jの億万長者400人のうち、ビル・ ゲイツを含めてわずか3人で「大部分のアメリカの資産は19世紀につくられたものである」という。(42ページ)

 

 アメリカ史上最大大富豪の上位5位

 

事業内容

名前

 

石油王

ジョン・D・ロックフェラー

22.8兆円

鉄鋼王

アンドリュー・カーネギー

12兆円

鉄道王

コーネリアス・ヴァンダーヒールド

11.5兆円

ホテル王

ジョン・ジェイコブズ・アスター

9.4兆円

メディア王

ビル・ゲイツ

7.4兆円

1998年時点の資産価値(43ページから抜粋)

 

泥棒男爵

 

ヴァンダーヒールド家が大富豪となる礎石を築いたのは、コモドアと称したコーネリアス・ヴァンダーヒールドで、今からほぼ200年前の1794年に生まれ、アメリカ陸軍の輸送にかかわる利権をもとに、伝説によれば賄賂などの不法な手段を駆使して蒸気船と鉄道の一大帝国を築いた。彼は19世紀アメリカの泥棒貴族のシンボルとされてきた。(22ページ)鉄道とは金融資本

 

 

鉄道と言えば話は古く聞こえるが、当時の鉄道は鉄路に名を借りた金融資本-巨大なマーチャントバンクであった。20世紀初頭に鉄道開拓の時代が終わろうとしていた時、全米における証券の発行額が、鉄道10に対して、その他の全産業の合計が5に満たなかったという事実は、大部分の企業が鉄道資本で動かされていたことを示している。(157ページ)

 

所得税法

 

 

20世紀に入ると、ついに1909年に企業経営者に対する課税法がアメリカ議会を通過したのである。1911年にあ独占を禁止するトラスト解体あ実行に移され、ロックフェラー家のスタンダード石油や、デューク家のアメリカン・タバコなどがいくつかの会社に分離された。・・・個人課税の所得税法が1913年10月3日に導入された最大の理由は、その半年前の3月31日に、金融王JPモルガンが死んだため、その遺産相続が無事に終わったからである。(36ページ)

 

我々が知るべき事

 

アメリカという国は貴族の無い社会としてスタートした。19世紀から20世紀にかけてアメリカは資本の集中が進んだ。泥棒男爵という言葉がある。「19世紀のアメリカ合衆国で蘇った、寡占もしくは不公正な商習慣の追求の直接の結果として、それぞれの産業を支配して莫大な私財を蓄えた実業家と銀行家」の事。

一方で泥棒男爵の事業が鉄鋼や鉄の価格を劇的に低下させ、現代社会を形成している事も事実である。今となっては当時の倫理観を批判する事も、資本化された産業は悪である、と否定する事も意味がない。知るべきは、現代社会はその延長線の上にあるという事。

富豪とテクノロジーの融合~100年単位で俯瞰

 

私はアメリカが「大部分のアメリカの資産は19世紀につくられた」ものであり、「最先端テクノロジーを率いる若手の長者たちが、保守財閥の遺産相続人と手を組んでいる所」がアメリカの力の源泉、であるという視点に興味を持った。それが石油産業、エレクトロニクス産業、航空機産業であり、これらは主にアメリカで育まれた。

蛇足

 

陰謀史観、金持は実は不幸である、などの否定的発想は意味がない。

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