毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

歴史とは空間と時間の中で解釈する事、そこにゴールが生まれる~『世界史の誕生』岡田 英弘 氏(1999)

世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

岡田氏は東洋、特にモンゴル史の研究家、歴史は西洋史と東洋史があった。1999年刊

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ギリシア帝国前にも歴史がある

歴史とは何か? 

 歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈し、理解し、説明し、叙述する営みのことである。(33ページ)

 

地中海文明にとっての歴史

 

 

地中海文明の「歴史の父」は、前5世紀のギリシア人、ヘーロドトスである。ヘーロドトスは、アナトリアエーゲ海岸の待ちハリカルナッソス(現在のトルコ共和国のボドルム)の出身で、その著書「ヒストリアイ」は、ペルシャ戦争の物語である。・・・ヘードロスは、自分が調べて知ったことについて語る、という意味で、著書に「研究」という題をつけたのだったが、これが地中海世界で最初の歴史の書物だったために「ヒストリア」という言葉に「歴史」という意味がついてしまったのである。

 

テーマはペルシャ戦争

 

 

ヘードロスは自分の知っている世界を、アジアとヨーロッパの二つに分ける。そしてギリシア神話から、アジアとヨーロッパの間に起こったこととされている話を四つ集めて、そうした事件が引き起こした怨恨がアジアとヨーロッパの間に積もり積もって、とうとうペルシャ戦争の原因になったと説いたのである。

 

ペルシャを語る事でギリシアの歴史を語る

 

 

ヘードロスの「研究」の対象はギリシア人の世界ではなく、もっぱらアジアとアフリカをおおうペルシャ帝国である。彼が叙述したかったのは、ほとんど全世界を支配する強大なペルシャに対して、統一国家すらない弱小のギリシア人たちが、絶望かと見えた最後の瞬間に、いかにして奇跡の勝利を収めたか、ということだったのである。(66ページ)

 

 
再び歴史とは何か?

 

 

岡田氏は世界には大きく別けて2つの歴史があると主張する。一つはヘードロスに始まり、キリスト教的終末思想を受け継ぐ、西洋史観であり、もう一つは司馬遷に始まる東洋史観。歴史をもつ文明は歴史を持たない文明に対し、①自らの正当性を主張できる、②現在を過去からの延長上に解釈できる、という利点をもつという。

日本は地理的にはアジアに位置しながら現在は西欧圏に組み込まれている。岡田氏は西洋史観の根底にヨーロッパとアジアの対立の構造があると主張する。西欧社会が2500年単位で歴史を解釈する時、ヘードロスが語ったギリシア戦争が今も意味を持つ事になる。一方で2500年を越える時間軸で歴史を俯瞰すると、違った解釈も生まれるであろう。

自らの時間を解釈する

 

歴史とは空間と時間の中で出来事を解釈する事である。自分自身を空間と時間の中で出来事をどう解釈するかは自らに委ねられている事に気づく。一人の人間の時間は余りに短い。その上で自分で過去と未来の時間の解釈を行うと、自分の意味を見つけられる。

蛇足

 

自分の意味をゴールと呼ぶ。

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