毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ギリシャとトルコ、そしてウクライナから見えてくるもの~『世界史で学べ! 地政学』茂木 誠 氏(2015)

世界史で学べ! 地政学

茂木氏は予備校の世界史の講師、 地政学とは、地理的条件が政治に与える影響を説明する学問。もともとイギリス、ドイツ、アメリカなどで国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的として発展してきました。(2015)

 

 

世界史における理想主義

世界史を「悪(野蛮)に対する正義(文明)の勝利」とする見方は、古代ギリシャヘロドトスに始まり、中世には十字軍を提唱したカトリック教会が引き継ぎ、近代になるとヘーゲルマルクスが合理化しました。アメリカもこの理論に基づいて西部開拓(先住民迫害)、東京大空襲や原爆投下、イラク戦争を遂行してきました。「野蛮を撲滅するためには、多少の犠牲はやむを得ない」という論法です。(6ページ)

世界史における現実主義(リアリズム)

世界史を正義の実現と見る「理想主義」とは真逆の立場を、「現実主義(リアリズム)」といいます。「歴史には正義も悪もない。各国はただ生存競争を続けているだけだ」という味方です。(6ページ)

地政学(ジオポリティクス)はリアリズムのひとつ

国家間の対立を、地理的条件から説明するものです。国境を接していれば、領土紛争やい民問題が発生する。だから隣国同士は潜在的な敵だ、という考えです。現在、日本との関係が悪化しているのは、隣国である中国と韓国です。日本がナイジェリアやアルゼンチンと争うことはありません。(7ページ)

ギリシャとトルコ

第二次世界大戦後のトルコは、アメリカから軍事援助を受け手NATOに加盟し、ソ連の驚異から地中海を守る防波堤の役割をしてきました。ちょうど日本が、ソ連・中国の驚異から西太平洋を守る防波堤の役割を果たしてきたのとよく似ています。ギリシャは、中世まではビザンツ帝国東ローマ帝国)、14世紀以降はオスマン帝国の支配下におかれ、19世紀にようやく英・仏の支援を受けて独立しました。・・・(ギリシャとトルコの)いずれも黒海の出口に位置し、ロシアの南下に対する防波堤になる、という地政学的役割は同じです。アメリカは、第二次世界大戦後直後にギリシャとトルコに対する大規模な軍事援助を開始し(マーシャルプラン)、両国をNATOに加盟させます。・・・ギリシャ韓国、トルコを日本、キプロス竹島、ロシアを中国と考えれば、よくわかります。日韓両国も歴史的な対立を抱えていますが、いずれも「中国に対する防波堤」という地政学的役割を持っています。(254ページ)

ヨーロッパとトルコ、ウクライナ

 

ヨーロッパから見た時ギリシャはヨーロッパであり、トルコはアジアである。ギリシャはEUに加盟し、トルコは加盟していない。ウクライナは西側がヨーロッパの影響力が強く、東はスラブ文化圏である。つまりはトルコもウクナイナもヨーロッパとの隣国に位置することになる。ヨーロッパ内部も一枚岩ではないが、あえてヨーロッパと非ヨーロッパと見たとき、ギリシャとトルコ、ウクライナとロシア、それぞれの間で問題が発生する構図が見えてくる。

隣人同士は何らかの問題を抱えるもの

 

隣人同士仲がよい、というのが理想である。国家同時が地域独占の性格を持つ以上、隣接する地域間では仲良くできないと思った方がいいのであろう。結局国家同士が地域間独占を睨んで問題を抱えるとしても、文化、ビジネスでは地域間で価値観に差があるからこそ多様性が生まれるのであろう。

著者は「各国は相変わらず生存競争を続けており、世界政府みたいなものは成立しない。」(304ページ)これが地政学からの視点である。

蛇足

 

ロシアはヨーロッパとアジアに横たわる

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