どうして摩天楼はあの様な形をしているか?摩天楼に投影されたアメリカを考える~『摩天楼とアメリカの欲望』(1986)
摩天楼は、アメリカの富とビジネスの象徴であるとともに古来、聖なる山や宇宙樹、バベルの塔などに託してきた人類普遍の夢の象徴でもあった。原書は1986年刊、邦訳は2006年刊。(2011年9.11の前)
摩天楼の時代、1870~1935
(摩天楼は)アメリカがいまだかつてない商業、富、そして建築物の増加へと転換する時期から得たもの(題材)である。・・・富と商業と競争はいくつものすばらしい作品を世に送り出す、いわば美しい花火を打ち上げるための火薬の役割を果たしたが、その中でもっとも想像力に富んでいたのが摩天楼であった。(12ページ)
ニューヨークはメトロポリス
(アメリカの摩天楼とバベルの塔の)どちらもメトロポリスの文化の記しであり、一つの民族によってではなく、地上の楽園を築くという共通の野心によってひとつにまとまった、言語の数と同じくらい多様で異なった人々が集まっているのだ。(81ページ)
アメリカが西欧の歴史の終着点
千年王国の教義を厳格に守ることを公言する道徳的な方向と、最終的に文明の帝国が実際西方に位置する新世界に築かれなければならないという確信にもとすく「自然な」あるいは世俗的な方向である。後者の「帝国の移動」は都市のなかの都市たるバビロンこそ先駆者としての役割を果たした。言い換えればアウグスティヌスが「最初のローマ」と記したように、世俗のメトロポリスの幕開けを告げたバビロンを始まりとし、ローマが華麗にその役割を引き継ぎ、最終的にはアメリカのメトロポリスがその論理的帰結として登場するわけだ。(82ページ)
アメリカは創世記の場だった
アメリカはヨーロッパの様な歴史が無い。アメリカはメトロポリスに相応しい建物を考えた時、ヨーロッパを否定し、ヨーロッパの前に歴史を遡る。ローマ、アレクサンドリア、アテネ、チュロス、ニエヴエ、バビロン。旧世界のスタートの地、バビロンにそのモチーフを求めていた。「アッシリア=バビロニア的、つまりは反ヨーロッパ的な装飾を持つ摩天楼」を建築したのだった。それは現代における創世記の実験と見なされた。
アメリカという国
「建国から今日に至るアメリカの歴史は、ヨーロッパ人が数千年にわたって観念の中で思い描いてきたもろもろの理想形を一気に実現していた」(380ページ訳者あとがき)
アメリカという国自体がキリスト教的終末観の上に成立し、アメリカのシンボルである摩天楼=skyscraperがバベルの塔のメタファーであった事に気づく。
2015年時点で、世界一高いビルはドバイの636メートル、再建された米国ワールドトレードセンターは417メートル。摩天楼は歴史観を象徴する。
蛇足
摩天楼を建てるのはビジネス、しかしそこに歴史が投影されている
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