毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

最初の推理小説はいつ書かれたか?それは印刷革命から3世紀後~『声の文化と文字の文化』(1991W・J・オング)

声の文化と文字の文化

WJオングは米国の古典学・英語学の研究家。「書く」ことと、印刷およびエレクトロニクスの技術が、ひとびとの精神、文学、社会のうえにどのように影響を及ぼすか。原書は1982年刊

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最初の推理小説

 

 

 

 探偵小説は、1841年のエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』に始まると一般には考えられている。1800年代初頭以前のすべての物語が、多少とも挿話の寄せ集めだった、・・・

 

 

「モルグ街の殺人」

1841年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編推理小説。史上初の推理小説とされており、天才的な探偵と平凡な語り手、結末近くでの推理の披露、意外な犯人像など、以後連綿と続く推理小説のジャンルにおける原型を作り出した。

f:id:kocho-3:20150130085817p:plainモルグ街の殺人 - Wikipedia

 
探偵小説の構造

 

理想的な探偵小説においては、まず、そののぼり道で、話はうむことなく緊張の度合いを高め、もはや耐えられないところまでくる。クライマックスでの「隠された真実」の認知と逆転が、その緊張を突然の爆発によって解き放つ。そして、大団円がくるまで、それらは巧妙に人を欺いていたことが判明するのである。

 

 
探偵小説は閉じている

 

 

 

探偵小説のプロットは、次の点で、極めて内面的であると言える。すなわち、一般にいえば、まず一人の登場人物の精神のなかに、完全に閉じ込められた認識のありかたが実現され、そのあと、そのありかたが、読者やほかの登場人物にも伝えられるということである。

 

書くことは思考すること

 

書く事は思考の過程が固定化される事であり、書く事を続ける事で徐々に構造を持ち、そしてそれが一冊の本となって閉じた世界になるときそこに結論が提示される事が期待される。推理小説はどうして1841年に出版されたか?グーテンベルグの印刷革命で書く事がより効率的になっていった。様々な本が執筆されそれはストーリー=構造を持つ小説を生んだ。更にストーリー自体から偶然性を排除し、論理的に組み立てたものが推理小説となった。印刷革命から3世紀を要した。

推理小説とは作者の論理思考

 

我々は推理小説の作者が創った、「空間が論理的に運動し、最後に爆発する」世界を楽しんでいるのである。本書の著者は活字文化からエレクトロニクス文化に変質するにつれ、「きっちりしたプロットでつくられた話は、あまりにも『安易な』もの」(308ページ)という。現代のストーリーはプロットを曖昧にする必要がある。一方で時代小説が求められるのは社会自体が明確な構造を持っており、プロットが安易である事にリアリティがあるからとも言える。どうして推理小説が成立したか、そこには内省的な論理思考と、我々はもはやそれだけだとは考えたくない世の中に住んでいる。

蛇足

 

我々は緊張と弛緩の両方を求めている。

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