毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今更ながら「エントロピーが縮小する事」を実感する~鈴木炎氏「エントロピーをめぐる冒険」

エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学 (ブルーバックス)

 

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すべてのエネルギー変化は温度が伴う

ドリルで木に穴を開けるとドリルの刃が熱くなる。必ずエネルギーの一部が不必要な熱エネルギーになってしまう事は実感出来る。熱エネルギーはドリルの刃から大気に放出される。エネルギーは不滅であり別の形で保存されている。

これを永遠とも言える時間に行う事を想定する。ドリルで穴をあけその熱が大気に放出される事を繰り返すと大気の温度はたゆむことなく上昇、最終的には熱エネルギーの割合が増加=エントロピー(乱雑ざ)の増加につながる。

エネルギーは減らず、エントロピーが拡大

 

この思考実験により宇宙のエントロピーは拡大している事がイメージできる。

日常エネルギーが減ったという言葉を使うがそれは正しくなく、エネルギーの一部が意図しない熱エネルギーに変換した結果エントロピーが拡大して使えるエネルギーの量が現象した、と言わなければならない。

熱法則と宇宙

 

  1. 宇宙のエネルギーは一定である。
  2. 宇宙のエントロピーは最大へ向かう。

 

 

いまやわれわれは、日常のあらゆる出来事につきまとう不可逆性-[取り返しがつかない]という宿命-がエネルギーではなく、エントロピーと不可分の関係にあることを知った。・・・いまこの瞬間もわれわれの眼前に展開しているのは、「エネルギーがなくなっていく」光景ではなく、「エントロピーが増えていく」光景なのだ。(75ページ)

 

 

ある容器の化学反応を想定する

 

反応は熱の出入りを伴う。例えば発熱反応なら、容器から出た熱は外のエントロピーを増やす。・・・第二法則が求めるのは、内外を合わせた全体のエントロピー増大なのである。全体として増大するのであれば、容器の中のエントロピーが減っても一向に構わないのだ。(199ページ)

 

地球内部のエントロピーは減少し続けている

 

地球内部では核、マントルといった構造が出来てきた。これは発熱をしながら液体が固体に変化していくプロセスに例えられる。地球内部だけと捉えればエントロピーは減少していく事になる。いつかは放熱が終わった時、地球はすべて冷えて固まり、エントロピーも最小になる。「ある容器」のイメージからエントロピーは局所的には減少していく事があってもいいのだと実感する。

現代は宇宙のエントロピーは増大し、時間は不可逆だという事に疑問を投げかける

 

現代の宇宙はインフレーションしている。空間が広がればエントロピーは当然低下する。また量子物理学は時間を遡れる先進波の存在を議論している。原因と結果は入れ換え可能かもしれない、という意味である。

本書から判る事、科学は未だ結論を出せていない。

蛇足

 

エントロピーは局所的には縮小可能である。

 

どうして地球は磁石として働くか?~自分の頭で理解しているか? - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ