米国「繁栄と狂乱の1920年代」は現代の大量消費社会に初めて到達した時代だった~1931年出版「Only Yesterday」
オンリー・イエスタデイ―1920年代・アメリカ (ちくま文庫)
本書は米国のジャーナリスト、アレン氏が世界大恐慌に突入した1931年に書かれた・「アメリカ史において、将来特異な時代と見なされるであろう一時期」について「事件後直ちにその歴史を書く」ことにチャレンジした本。1986年初版
1920年代とは大衆による個人消費の時代
セールスマンと広告業者は、少なくとも(米国の繁栄の)代行者であり、福音伝道師であった。実業界が末端の消費者がたいへん重要な存在であることに気づいたのは、この時がはじめてである。消費者を、惜しげも無く買うように仕向けることができなかったならば、6気筒車、スーパーヘロダイン受信機、紙巻たばこ、頬紅のコンパクト、電気冷蔵庫などの流通機構は、そのはけ口を失うことになる。(168ページ)
なぜ個人消費が爆発したか?
米国は第一次世界大戦で損害を被らず、生産能力を拡大さていた。欧州が疲弊する一方で米国は世界で唯一、広大な国内市場を享受する事ができた。そこに自動車とラジオというキラー・アプリケーションが個人消費者向けに量産される事になる。
BtoC市場が成立した背景
実業界は今まで産業用途、軍事用途が主な市場だったのであろう。そこにBtoC市場が一挙に成立した。それを可能にしたのは金融の流れの変化だった。
「その第一は月賦販売の増加である。人々は、買い物を現金の所持高に制限するのは旧弊だと考える様になった。・・・もう一つの促進剤は、株式市場への投機である。株価が急騰していた1928年から29年にかけては、何十万人かの人々が、・・・(キャピタルゲインで)動産を買っていた気配が、多分にある。」(168ページ)
マネーサプライで見ると
1920年代後半にマネーサプライは飛躍的に増加、大量生産効果で物価水準は「下落傾向~横ばい」だった。
日和見の論調に踊らされることなかれの画像 | 元ヘッジファンドE氏の「着実に2割稼ぐ株式投資術」
同じ視点で日本の高度成長期を見る?
第一次世界大戦の後、個人消費の拡大によって繁栄を謳歌した米国、日本と世界の個人消費を捉える事に成功した高度成長期の日本、俯瞰してみると同じ事の繰り返しだった様に見える。
手元の本書は1986年7版、帯には「20年代アメリカ=80年代・日本~現代のすべてが始まった繁栄と混乱の1920年代~」
蛇足
こちらもどうぞ
1920年代の自動車広告から見えてくるもの~誰かがデザインした欲望、無くても済む欲望。 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ