毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

蓄音機が発明された時最初のアプリケーションは何だったか?~「近代発明家列伝」橋本毅彦氏(2013)より

 

近代発明家列伝――世界をつないだ九つの技術 (岩波新書)

橋本氏科学史・技術史の研究家。大航海時代から産業革命を経て交通と通信の革命が到来する。世界を制するとは時間と空間を制することだった。(2013年刊)f:id:kocho-3:20141226080853p:plain

明王エジソンイノベーションの観点から再評価してみると、、

メリーさんの羊と蓄音機

 

 

数ある発明品の中でもエジソンが最も愛した製品はおそらく蓄音機であろう。音声を波動信号として記録する装置はエジソン以前にも発明されていたが、記録から元の音声を再生する装置はまだ生まれていなかった。(77 ページ)」

 

 

蓄音機を誰に使って貰うか

 

 初期の蓄音機というと、私たちは大きなラッパのついた音楽再生用の機械を連想する。だが蓄音機の誕生まもない当時、その使用法は全く定まっていなかった。エジソンは、事務所などで口述筆記用として使ってもらう事を考えた。・・・次に彼が作ったのは、蓄音機を人形に埋め込んだおしゃべり人形だった。・・・彼は、娯楽場に蓄音機を接地し、コインを投じて音楽を聞いて貰う音楽用蓄音機を開発した。それは大評判となり、蓄音事業はやっと軌道に乗ることになった。(79ページ)

 

 

蓄音機に何を録音するか?

 

 ビクター社は他の蓄音機会社に先駆け、オペラ歌手と契約を結び、その歌声を録音したレコードを発売した。それまでクラシック音楽の歌手たちは、自分たちの名声が落ちることを恐れ、音質の定かでない蓄音機への録音を拒否していた。(80ページ) 

技術とは何か

 

  技術とは、そもそも何かのための道具である。ある目的を達成するために考案された手段である。その目的は、発明がなされる以前にあって、社会的必要性が痛感されているかもしれないし、逆にあまり意識されていないかもしれない。

 

蓄音機の社会的必要性は何だったか?

 蓄音機に最初に録音されたのは「メリーさんの羊」であった。だから当然蓄音機は音楽を愉しむ為に発明されたと思っていた。エジソンが1877年、蓄音機を発明した時点では何に使うか、という事が定まっていなかった事に驚く。雑音だらけの歌声と本物の歌声とどっちがいいか、何も無い時に想像する事は極めて難しい事である。

蓄音機は何の為の道具か?

 エジソンはBtoBを考え、それをBtoCに変えた。エジソンはハードの日以前にフォーカスし、エジソンとは競合の、後発のビクター社がクラシック音楽で市場を握り、エジソンは撤退する事になる。蓄音機は「人々が音楽を愉しむ為の道具」と認識されたのである。

100年の時間軸でみると

 蓄音機は音楽を生演奏から録音に変えて、どこでも何度でも愉しむ事を可能にした。新しい技術は想像しない市場を生む。100年の時間軸で見た時、ボーカロイド(リアルな歌声を合成するためのソフトウェア)は何を生み出すのだろうか?

 
蛇足

 エジソンはコンテンツを自分の趣味(フォークソング)に拘った

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