毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アレクサンドリア図書館~現代社会の知の源

世界史の教科書(山川出版)の記述

プトレマイオス朝エジプトは古いエジプトの中央集権的支配と官僚制をそのまま受け継ぎ、穀物・塩・パピルスなどの取引を国家が独占して経済的に繁栄した。首都アレクサンドリアは政治と文化の中心地として重要性を増していった。

(ヘレニズム文化の)中心となったのはプトレマイオス王家が作ったアレクサンドリアの研究所(ムセイオン Museion)であった。キュネレのエラトステネス(前275頃~前194)は地球の回りの長さをほぼ正確に測定し、サモスのアリストタルコス(前310頃~前230頃)は太陽中心説を唱えた。またシラクサアルキメデス(前287頃~前212)は浮体原理など、物理・数学のさまざまな原理を発明し、アレクサンドリアのエウクレイデス(ユークリッド、前300頃)は平面幾何学を大成させた。

要約すれば上記の通り。ここにはプラトンソクラテスアリストテレスというギリシャ哲学を継承し、現在の科学技術につなが人類の知的活動があった。

 

アレクサンドリアの興亡

本書ではBC330からAC646の約1000年にわたるアレクサンドリアの都市の変遷を綴る。どうして「ここに現代文明社会の起源がある。」(本書の帯より)事が可能であったのか。

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プトレマイオス朝エジプトは知の帝国を目指す

アレクサンドロスの帝国の一部、エジプトを引き継いだプトレマイオスはまずは宗教による正当性の確保を行った。

ギリシャとエジプトの伝統宗教を束ねて、ギリシャからは君主、エジプト人からは神として扱われる、それがプトレマイオスにとって必要なことだった。(エジプト由来の)聖牛アピスを人格化し、(ギリシャ由来の)死者の神オシリスと合体させて、セラピス神として崇める事にした。その結果新しいセラピス神には、既存の神々が持つ特徴がこれでもかと盛り込まれた。(84ページ)

プトレマイオスにはアリストテレスの影響

若きプトレマイオスも、完璧なイデア世界というプラトンの概念を知ったのはアリストテレスを通じてのことだったし、アレクサンドリアに世界最高の図書館と研究機関ができた背景にはアリストテレスならではの(抽象的思考に加え経験を通じて獲得する知識も重視する)知識収集法があった。

デメトリオスが具体化

プトレマイオスの大構想を具体的な青写真に描き出したのはデメトリオス。アテナイアリストテレスと共に哲学者・政治家としてその名を知られたデメトリオスがアレクサンドリアに逃げてきたのは幸運だった。デメトリオスはアイデアを持ってきた。世界にアテナイの名を知らしめているのは、民主主義ではなく、優れた哲学者だ。都市や国家の中心には、宮殿でも議会でも、ましては武器庫でもなく、ミュージアムがあるべきであろう。ミュージアムとは「ミューズのいるところ」という意味で、女神ミューズは詩と音楽と舞踊、リベラル・アーツと科学を司る。偉大な王たらんとするプトレマイオスは、偉大なミュージアムを作らなければならない。デメトリオスはさらに、(プトレマイオスの)蔵書をさらに拡大するように進言したのである。アレクサンドリアのムセイオンという、世界がまだ知らない偉大な施設の建設がいよいよ開始された。(118-120ページを再構成)

アレクサンドリアで花開いた人類の知性

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古代アレクサンドリア探訪 −学問のコスモポリス− 

ギリシャ哲学にエジプトの伝統と農業生産という富が融合し、自由な議論を許すという社会が知の限界が拡大した。そして自由な議論が出来なくなった時、知の拡大は止まった。