毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

非線形科学~同期制に関する蔵本モデル

2つの時計

「17世紀オランダの偉大な科学者」であったホイヘンズは振り子時計の開発も行っていた。

1665年のある日、ホイヘンスが部屋の壁に並べてかけてある自作の二つの時計を眺めているとき、それらが示す奇妙な振る舞いにふと気がついて大いに驚きました。二つ の時計がまるで示し合わせたかのように、いつまでも歩調を揃えてリズムを刻むのです。(中略)ホイヘンスは、歩調の一致の原因は壁を通して二つの時計も間にごく弱い相互作用が働いているためではないかと考えた。(130ページ)

 非線形科学 (集英社新書 408G)

蔵本氏は自然界の同期現象を数学的に説明した研究家。本書は「意志を感じざるを得ない現象にも、複雑で手のつけられない現象にも、明快な法則・能動因が潜んでいる」ことを明らかにしている。

同期の蔵本モデル

円周上の等速円運動で表されるモデルがあるとします。円周上状態を以下では「粒子」と読んで、力学運動のイメージで述べることにします。(中略)振動子間に、相互作用を導入すると、どうなるでしょうか?相互作用が働くと、粒子が本来持っていた速度を変化させます。粒子たちが真空中ではなく強い空気抵抗を受けながら走っている場合には、実際にそうなるでしょう。(中略)ここで引力相互作用を導入するとどうなるでしょうか?引力が十分強ければ、先行する粒子は優に引き戻され、遅い粒子にはほんの少し先行しているところで均衡状態が達成されるでしょう。速さの違い派両者を引き離そうとする斤力の効果を持ちますが、適当な相対距離をとることで、それが引力とちょうど釣り合うのです。(137ページ)

f:id:kocho-3:20140102221029p:plain

 

その意味する所

同期という現象は数理的に表現可能ですが、それは振り子時計にも、サーカディアン・リズム(概日リズム、生物が24時間に同期する事)にも、ホタルの集団(の発光の同期)にも、心拍にも実現される不変の数理構造です。物質的な成り立ちを不問のまま、そこに進化発展の契機を持つ科学の一領域が成立するのです。(245ページ)

蛇足

チューリングパターンが空間的構造であり、同期は時間的構造。