毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

テクノロジーの進化とスフィンクスの謎

テクノロジーの進化

テクノロジーの進化にはsカーブやハイプカーブといった一定の法則があるという分析手法がある。

「Sカーブ」が不確実性を克服する―物理学で解く2000年の経営

 セディス氏は物理学出身の未来学者。

多くの現象はライフサイクルをもって動くということである。すなわち誕生、成長、成熟、衰退、そして死である。時間の枠は様々に変化し、ある現象を季節的循環に見せ、他の現象を自然の進化に見せる。(中略)もし成長プロセスの前半を提示されれば、その未来を予測でき、後半部分を見せられればそれが辿ってきた過去を論理的に推測することができる様になった。(28-29ページ)

f:id:kocho-3:20131227074750p:plain

著者は「大当たりのミニコンピュータ」の販売量の変化がサイクル性を持つ例として挙げる。上のグラフは累積販量であり、下は3カ月毎の販売量である、販売量は正規分布である事に注目。

S字カーブの数学的説明

Sカーブ は微積分の概念を利用したものである。Sカーブは成長率の変化の割合によって敏感に変化する。数学的には二次導関数にあたるもので、言い換えれば「成長への期待」ということになる。この二次導関数を理解する助けとして自動車を旅行する場合を思い描けば良い。走行距離を時間の関数として捉えるとS字カーブになる。距離の変化によって変わる自動者の速度が一次導関数である。走行距離が早ければより短い時間で遠くまでいける。走行速度は通常、釣鐘形をする。すなわち走り出す時と停止する時は低速、走行中に最高速度になる。(78ページ)

ハイプカーブ

がートナーという米国のコンサルティング会社がテクノロジーの普及をハイプカーブを使って説明する。

f:id:kocho-3:20131227074049p:plain

http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20120906-01.html

 

Sカーブとハイプカーブは同じ

私はSカーブもハイプカーブもロジックが同じと感じた。ハイプカーブはオーバーシュート(過度の熱狂、ブーム)とオーバーキル(過度の悲観論、アンチブーム)を持つ、Sカーブにオーバーシュートを加えれればハイプカーブになるという事。

 

一定の物理的空間のライフサイクルと成長性

すべての現象は一定の物理空間の中で「スタート→成長→成長鈍化→停止」、というサイクルを繰り返すという当たり前の帰着を得る。

  これは一定の物理空間である点に注意が必要であり、エネルギーが追加されたり空間が拡大すればサイクルそのものも拡大する。またこのサイクルを人間になぞらえると停止=死となるが、これはサイクルをどう捉えるか、という事。人のサイクルを超えた現象を認識できるか?が重要である。

スフィンクスの謎

著者はSカーブの比喩、あるいは元祖、としてスフィンクスの謎を挙げる。

スフィンクスは「一つの声をもちながら、朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か。その生き物は全ての生き物の中で最も姿を変える」と問い、若きオイディプースは「答えは人間である。何となれば人間は幼年期には四つ足で歩き、青年期には二本足で歩き、老いては杖をついて三つ足で歩くからである。」そしてオイディプースが王になった。ギリシャ神話で有名な悲劇の一つ。(WIKIより)

人は死から逃れる事はできないがこの謎解きは3000年以上の歴史を超えて我々に一つのコンセプトを伝えている。我々は人生の長さを超える時間軸で認識できる。

蛇足

我々はランダム性と時間的制約がはずれつつあるサイクルに住んでいる。