毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

潜在的に人に影響を与えるメカニズム~ミラーニューロン

 結論

神経科学におけるミラーニューロンの発見は、意識的なレベルでの他人の理解に対し、意識事前の神経生物学的なミラーリングのメカニズムがあることを明らかにしてしまった。

 

サルのミラーリング

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最近の研究では、マカクザルの赤ちゃんは、人の表情の動きを模倣することが出来ることが示されている。しかし、この行動にミラーニューロンが関わっているかどうかはまだ分かっていない。

 

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)マルコ・イアコボーニ氏は神経学者。本書はミラーニューロンの研究内容を紹介している。 

 サルの脳内にあるミラーニューロンは、ものをつかんだり、食べ物をかじったり、意図を伝達する顔の表情を作ったり、といったサルの運動レパートリーにある根本的な行動の制御に関わっている。このミラーニューロンは、サル自身がまったく動いていなくても、誰かがその行動をしているのを見ただけで発火するという驚くべき特性を持っている。ミラーニューロンは行動に関係した音にも反応し、例えばピーナッツの殻を割る音などに、その行動が見えていない時でさえ反応する。ミラーニューロンは行動が部分的に遮蔽されていても発火するし、更にまったく同じ二つの行動でも意図が異なっているならば、その行動の違いを識別できる。これらを考えあわせると、このミラーニューロンは観察しているサルの脳内で、他の固体の行動や意図を「擬態」している様に見受けられる。(312ページ)

人間はより重要

 私たち人間は学習する能力や文化を伝播する能力が飛躍的に大きくなっていて、その能力には模倣が根本的に関わっているからだ。さらに人間のミラーニューロンシステムは、共感、自己意識、言語にとって重要であるらしい。(313ページ)

私たちの脳はミラーリングとシミュレーション、「他人の行動を観察している人の脳内で起こっている事」の神経機構を使って他人にアクセスできる。私たちの脳内では他人を経験にもとづいて、意志する間もなく、自動的に理解しているとしか思われない。現象学フッサールはこの現象を(ミラーニューロンに言及することなく)「対化」と称した。(319ページから再構成)

ミラーニューロンは前運動的であり、従って私たちが意識して行う行動とはもとんど関係がない。実際カメレオン効果の様なミラーリング行動は潜在的で、反射的な、意識以前の行動と思われる。(325ページ)

 

筆者は言語がミラーニューロンの助けを借りて脳内でシュミレーションする事、例えば小説、会話による言語表現の進化、にも言及しており、興味深い。

 蛇足

「同じ釜の飯を食べた中」、は神経細胞的に正解である。(あたりまえ)