毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々の脳はクロックサイクル0.03秒、今とは”とびとび”である~『意識のなかの時間』エルンスト・ペッペル氏(1995)

意識のなかの時間

 ペッペル氏は心理学の研究者、「今」「同時」「過去」というような情報は、脳内のどのようなメカニズムに対応しているのだろうか?(1995)

 

 

時間とは何か?

「絶対的で、真実かつ数学的な時間は、それ固有の性質に基づいて自ら一様に流れ、外界の何者にも関係しない。」

これは300年ほど前にアイザックニュートンが与えた時間の有名な定義である。物理学の法則は、一つの一様に流れる時間を想定することによって初めて公式化できるということが明確にされなければならない。(10ページ)

脳のクロックサイクルは0.03秒

脳の中ではおそらく「振動する」プロセスが働きだし、その際この振動の各周期はおおよそ0.03秒である。・・・(脳内には)常に存在し、突然の事象によってそれが直接その事象と同期するということである。・・・(脳内振動とは)神経細胞の特定の回路に基づいて生じる「電気的」な振動である。・・・(脳内の)振動プロセスは事象の同定(認識)のための基礎ともなっている。(45ページ)

時間は連続的なものか、“とびとび“か?

もしも私たちがある特定の時点でしか反応や行動ができないとしたら、時間の連続性はおそらく錯覚にすぎない。なるほど私たちは同定作用と決定作用の不連続性に気が付かない。・・・0.03秒から0.04秒という脳の振動の周期によって、私たちは一秒におよそ30回の同定の機会と決定の時点しかもちあわせていないのである。・・・私たちは、主観的時間は不連続に流れ、私たちの経験や行動の経過が時間的な量子に細分化されていると想定できる。・・・私たちは何を決定するかについてはおそらく自由であるが、いつ決定するかについては自由ではない。(47ページ)

記憶を使って時間を飛び越える

私たちは未来の状況に備えるために記憶を保有し、記憶によって時間を飛び越える。・・・記憶とは、その後の状況で決定を下す際に過去経験に基づいて必要な情報を提供する中枢機関のことを意味している。・・・(記憶は)世界が完全に決定されていないからこそ発生の歴史の中で進化したものである。したがって、記憶は完全な非決定性と完全な決定性の間の世界にしか見いだされない。・・・人間の行動の不確実性は、自然の部分的な不確実性に対する進化的適応である。(120ページ)

意識の中の時間

我々は時間を連続的だと思い込んでいる。ニュートンの定義は我々にとって受け入れ易いものである。

しかし我々の意識の中の時間は連続的ではなく、“とびとび”である。

本書によれば、聴覚が判定できる最小単位は0.03秒、視覚はもっと長いという。結論から言えば脳内振動は0.03秒より短い時間は認識できない。そして時間が“とびとび”であるなら、時間を超えて自己の同一性を担保するものが記憶である。記憶によって我々は記憶を参考に決定する術を得た。ここで重要なのは記憶の範囲である。自己の記憶だけに限定する必要はない。他人の記憶にまで拡張するとき、他人と記憶をシェアする時、人はもっと大きく時間を飛びこることができる。

蛇足

脳のクロックサイクルは0.03秒

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