毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ヒトは誰に向けて、洞窟で動物を描いたのか?~『ヒトはなぜ絵を描くのか 』中原 佑介(2001)

ヒトはなぜ絵を描くのか 

中原 佑介(1931年- 2011年)は、日本の美術評論家。ラスコーやアルタミラ等の洞窟画をめぐり、その壮大な謎に挑む。(2001)

 

ショーヴェ洞窟
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フランス南部ア付近にある洞窟。最古と思われる約3万2000年前の洞窟壁画であるショーヴェ洞窟壁画で知られる。(ラスコー洞窟壁画は約1万5千年前、アルタミラ洞窟壁画は、約18,000年~)

 

 

どうして洞窟に、動物の絵を描いたか?

ラスコーの洞窟画の見学も、別に先史時代の洞窟画の研究をしようという理由からではなく、人類という名の動物は、どういう欲求にもとづき、あるいはいかなる動機に突き動かされて絵というものを描くようになったのか?(15ページ)

確かなことのひとつは、動物を描くことが始まりだったということですね。手形や理解し難い記号のような図像も見られますが、圧倒的に多いのは動物の絵です。植物はなぜだかまったく描かれなかった、人類の絵画は動物を描くことから始まったといっていいわけです。(23ページ)

絵は創造主へのメッセージ

洞窟画は集団のメンバーのあいだのコミュニュケーションの手段ではなかったのではないかというのが、わたしの考えです。クロマニヨンの仲間同士には言語コミュニュケーションが成立している。・・・(コミュニュケーションの)その相手には言語では通じないという認識がある。(213ページ)

動物を作り出している超越的存在、つまりは神です。その相手に絵でコミュニュケーションをはかるというのは、こういう例を持ち出すのはどうかと思うけれども、地球外の惑星に住んでいるかもしれないヒトと同じ生物へ向けられているプレートに、絵でメッセージを知らせているのと似たことです。(214ページ)

超越主は洞窟で動物を創る、

(動物の)創造主は洞窟の奥の目に見えないところにいると考える。多分、人間が女性の子宮でつくられ、そこから育ち、生まれてくるように、動物の創造主は自然の洞窟という子宮を持っていると考えたのではないか。・・・そこへ動物を描くというのは、したがって仲間への直接的なコミュニュケーションとはいい難い。・・・その絵がヒト同士のコミュニュケーションとなり得ることを人間が知るようになったのはずっとあとです。(214ページ)

 

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洞窟画はメディアであった

著者は、洞窟画が言葉の通じない神とのコミュニュケーションの手段として発明されたと考える。3万年前、ヒトは既に写実的な絵を書く能力を持っていた。それは近代絵画だけのテクニックではなく、ヒトの本能に根ざした、形態を記憶できるという能力に根ざしている。絵を描くことは、神あるいは他者へのコミュニュケーションへの欲である。洞窟画は神へのメディアであった。

蛇足

絵はメディア

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