毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は過去に囚われ未来を想像できない存在である~不確実性下の意志決定論で確率的に証明済み

 確率的発想法~数学を日常に活かす

小島氏は数理経済学の専攻、不確実性の存在下での意志決定論、1994年刊

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エルスバーグのパラドックス(1961年)

理経済学者のダニエル・エルスバーグは、1961年に発表した論文で、次のような実験結果を報告しました。まず被験者に次のような二つのつぼⅠ、Ⅱを見せ、こう伝えます。

「つぼⅠには、赤い球が50個、黒い球が50個の計100個の球が入っています。つぼⅡには、赤か黒の球が合わせて100個入っていますが、いずれが幾つ入っているかはわかりません。さて、あなたはどちらかのつぼを選んで、球の色を予言し、目隠しして球を一つだけ取り出します。予言が当たれば賞金を差し上げます。させ、どちらのつぼを選びますか?」(111ページ)

大部分はつぼⅠを選ぶ

つぼⅠ、Ⅱは被験者にとって優劣はなく、どちらがエアらばれても良いはずです。ところが被験者の大部分はつぼⅠを選んでしまいます。・・・つぼⅠでは赤、黒を引く確率が2分の⒈づつとはっきり分かっていますが、つぼⅡではそれがわからない、という事です。つまりこの実験では確率が分かっている不確実性とわかっていない不確実性に対して、人々が好みの違いをもっている、ということが明らかになりました。(112ページ)

 

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01.エルスバーグパラドックス | エルスバーグパラドックスからの示唆 | High FAI システムトレード

不確実性とは何か?~経済学者フランク・ナイトの理論(1921年)

確率が与えられている環境、いうならば測定可能なリスクはすこしも不確実ではないと断じたのです。本当の不確実性は、確率さえわからないものであり、従って過去の生起頻度から割り当てられないたぐいのものである、とナイトは考えました。(113ページ)

つぼⅡは不確実性を回避している

つぼⅡを選択する事により不確実性を回避する事が可能である。実際にはつぼⅠとつぼⅡの期待確率はまったく一緒である。人は不確実性を嫌うのである。これは「自分の意志で自分の運命を選択する事の自信のなさの現れ」(122ページ)と表現されている。つぼⅠは本人以外が設定した確実性を選択しているのだから。

我々は意味のない過去の情報に囚われる存在である

選択をする事は感情を引き起こすものである。つぼの中の赤・黒の比率を知った所で、選択する球の色を予測する面では役に立たない。我々は未来に影響の与えない情報に囚われている事になる。

過去には不確実性はない

我々の意思決定は過去の記憶に大きく影響される。未来の利益を最適化すべきなのに必要以上に過去の記憶から誤った判断をしている。未来は常に不確実である。不確実性を排除しようとして未来に目を向けず、過去という確実性の中に逃げ込んでいる。

蛇足

自由から逃走していないか?

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