毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ミドルワールドという言葉を聞いた事がありますか?~物質は動き続けている

ミドルワールド 動き続ける物質と生命の起原

ブラウン運動というと、理科の教科書でなんとなく聞いた覚えがある程度の方は多いと思います。「なんだか小さい粒子がうごめくことなのだろう」という漠然としたことは記憶にあるけど、では何故そういう現象が起こるのか? それはどのように現在応用されているのだろうか? というところまで踏み込んで調べたり、学んだりした人はかなり少ないことでしょう。

 

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ブラウン運動

液体のような溶媒中に浮遊する微粒子が、不規則(ランダム)に運動する現象である。1827年、ロバート・ブラウンが、水の浸透圧で破裂した花粉から水中に流出し浮遊した微粒子を、顕微鏡下で観察中に発見した。(Wiki)

ミドルワールド~重要なのは花粉の大きさ

最大のものは、直径が1㎜の数千分の1(1,000分の一㎜は1μ)以下だった。一番小さいものは多分、1㎜の5,000分の一から10,000分の一である。すべてが髪の毛の100分の一から10分の一の範囲に納まった。・・・この大きさで重要なものが沢山ある。細胞、DNA、ウィルス、ミルクの中に浮かぶ脂肪の粒、髪の毛を洗う時に手に触れる繊維状の分子、・・「ミドルワールド」と私が呼ぶ世界。ミクロとマクロにはさまれた世界こそが、重要でしかも興味深いのだ。

1905年ブラウン運動を理論的に説明

液体はぎっしり詰まっているから、分子は簡単には直線運動できない。直線上の隣の分子と衝突して、どこか違った方法にはじき飛ばされるだろう。(分子のランダム運動)・・・液体の分子よりもっと大きい粒子を取り上げることを考える。液体の中に入れて、ランダムに揺れる液体分子の海に浸す。大きな粒子はどのように動くか?・・・もし液体が目に見えない分子の海からできているとすると、それに浸されている大きな目に見える粒子はランダム・ウォークすなわちブラウン運動をするに違いない事を示した。・・・ブラウン運動を観察できるということは、液体物質が本当に何十億という粒子からできていることの証明になる。(148ページ)

f:id:kocho-3:20140731071621p:plainブラウン運動 - Wikipedia

Wikiのアニメーションを観てみる。アインシュタインは黄色い粒子=花粉の挙動から小さな黒い粒子を思考により観た。黒い粒子の存在が確認されていない時代である事をお忘れ無く!

 

この理論はアインシュタインによってブラウン78年後、ブラウン運動は物質が分子でできている事の証拠と説明された。1905年当時の技術は分子を直接観察する事はできなかったという事。粒子がランダム・ウォークをする事から小さな分子のランダム運動を思考により「観察した」事になる。以下のWikiのアニメーションを思考実験により見たのである。

 

動き続ける物質と生命の起源

アミノ酸鎖を想像する。その鎖がミドルワールドスケールまで長くなったら、くねくねと動かざるを得ない。そうなると、この物質の断片は必然的に、化学の法則とミドルワールドのランダム性との間の不鮮明な領域に引き込まれる。実際のたんぱく質酵素は多分、この素晴らしいバランスが成立する領域に引き込まれて、何百年もの進化の果てに、信じがたいほどの精度と柔軟さに達したのだと思われる。・・・そしてたぶんある日、ブラウン運動が生命を引き起こすという本当に驚くべき考えに至るということが、この本、すなわちミドルワールドについてのこれまでの物語に対する素敵な結論になるであろう。(277ページ)

 

今から約180年前にブラウンが花粉のランダム運動を観察する。アインシュタインはそれが分子のランダム運動だと思考し、最終的に電子顕微鏡などにより観察された。物質はその持つ温度によって動き続ける、これは生命現象ではない。しかし生命現象もこの仕組みの上に成立している。つまりは物質と生命の間はミドルワールドによって切れ目なく繋がっているという事が実感できる。人はミドルワールドを考える力のみによって気づいた。花粉はその始まりを教えてくれる。

蛇足

人は考える力で見えない世界を見る。