ゴッホとピカソの共通点は何か?~『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』山口揚平氏(2013)
山口氏は金融出身のコンサルタント、ゴッホとピカソの違いと共通点から何を学べるか?(2013)
ゴッホは、弟テオの理解と援助のもとで創作活動を続けることができたが、その2000点にものぼる作品のうち、生前に売れた絵はわずか1点のみだった。
ピカソは違った。その卓越した画才もさることながら、私人としても成功した。・・・91歳で生涯を閉じたピカソが、手元に残した作品は7万点を数えた。・・・ピカソの遺産評価額は、日本円にして約7,500億円にのぼったという。美術史上、ピカソほど生前に経済的な成功に恵まれた画家、つまり「儲かった」画家はいない。(5ページ)
ピカソの絵はなぜ高いのか?
特に、自分の絵を販売することに関しては天才的で、ピカソは新しい絵を描き上げると、なじみの画商を数十人呼んで展覧会を開き、作品を描いた背景や意図を細かく説いたという。
絵が素晴らしいのは前提だ。だが人は、作品という「モノ」にお金を払うのではない。その「物語」を買うのだ、と彼は知っていた。そして、たくさんの画商が集まれば、自然に競走原理が働き、作品の値段も吊り上がる。ピカソは、自分の作品の“価値を価格に変える方法”、今でいえば“マネタイズ”の方法をよく知っていたのだと思う。(6ページ)
なぜピカソは小切手を使ったのか?
生前のピカソは、日常生活の少額の支払であっても、好んで小切手を使ったという。・・・(小切手を貰った商店主は、)ピカソの直筆サイン入りの作品として部屋に飾るなり、大事にタンスにしまっておくだろう。そうなれば、小切手は換金されないため、ピカソは現金を支払うことなく、実質的にタダで買い物を済ませることができる。・・・これは現代の金融でいえば、信用創造、“キャピタライズ”の考え方である。(7ページ)
マネタイズとキャピタライズ
(お金を稼ぐ=マネタイズとは)自分の価値や強みによって他人や事業などに貢献し、その対価としてお金を得る世界である。(32ページ)
(信用創造=キャピタライズとは)日本銀行やFRBなどの中央銀行が行なっている「お金を刷る」行為がそれだ。・・・21世紀はこの信用創造(キャピタライズ)を、企業のみならず個人がもっと行うようになるだろう。そう、あなたがお金をつくり出すのだ。(33ページ)
ゴッホは37歳で亡くなった。ピカソは91歳でなくなった。ゴッホが画家として活躍したのはわずか10年、無くなった1890年には個展が開かれ人気も確立しつつあった。ゴッホの絵が生前売れなかったのはマネタイズする時間があまりに少なかった。
一方のピカソは時代の流れの中でマネタイズの手法を洗練させ、キャピタライズの範囲にまで拡張する。ピカソとゴッホの生まれた年には約30年の差、ほぼ一世代分の差がある。ピカソがゴッホよりお金に敏感だったというより、時代の差であろう。
山口氏はゴッホとピカソを「ふたりとも愛に満ちたとても幸福な人生を送った。」(10ページ)ゴッホもピカソもそれぞれの時代背景という文脈の中で、新しいもの、に挑戦し続けたことは間違いない。
ゴッホとピカソ、生前お金を稼いだ結果は違ったとしても、二人の絵の作り出した絵は今も人びとに影響を与え続けている。いかに二人の人生が好対照に見えたとしても、その到達した地点=自ら価値創造をし、人びとを愉しませている、その1点において一緒である。
貧乏だったゴッホと金持ちだったピカソの共通点から何を学べるか、が重要である。
蛇足
二人の共通点、独自の様式を確立したこと
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