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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

あなたにとって前衛とは何ですか?~『ピカソは本当に偉いのか?』西岡文彦

ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)

  西岡氏は版画家、 ピカソを通して現代美術のからくりをあばく、目からウロコの芸術論。(2012)

 

 

変化はネガティブな意味であった

今日の私たちにはわかりにくいことですが、この進化論というものが登場する以前、変化や刷新といったものは基本的にネガティブな意味しか持っていませんでした。神が最初に全宇宙を創造したとするキリスト教の世界観に従えば、真なるものや美しいものは、太古にその理想型を与えられていることになります。(166ページ)

ダーウィンの『種の進化』(1859)が前衛に根拠を与えた

ダーゥインの進化論によって、変化するということが「向上」を意味し始めたことと、その変化に乗り遅れたものは生き残れない、という今日では自明と思われている考え方が定着することになったわけです。

この進化論ほど、前衛という概念に根拠を与えるものはありませんでした。・・・そして美術もまた、適者生存の原理に従い、変化しないことには未来に向けてその生存を確保できないと考えられるようになったのです。

かくして、革新的であることが時として「美しい」ということをさえ凌駕する、「前衛」に特有の美意識が確立されることになりました。(167ページ)

ピカソが語る画家とは何か?

人間を超えた未知の存在に呪縛されずにいるためには、仮面のように、そうした存在から自分を護る盾となり、それに立ち向かうための武器ともなるようなものを作る必要があると思いたったというのです。『アヴィニョンの娘たち』は霊的な武装つまりは「魔除け」のためにピカソが描いた最初の絵だというのです。(63ページ)

ピカソの絵はどうして偉大なのか?

美術館に入ることを目的に制作され始めた近代以降の絵画では、絵画のありようを絵画そのもので物語る「自分語り」性や「前衛」性というものが作品の価値を決めるようになったからであり、ピカソはそうした「自分語り」性や「前衛」性において圧倒的なまでに突出した存在であったからです。(171ページ)

f:id:kocho-3:20161017100530p:plainアヴィニョンの娘たち ピカソ絵画の解説

ピカソは本当に偉いのか?

ピカソは『アヴィニョンの娘たち』(1907)に周到な準備を重ね、現存する習作だけでも600枚を超えるという。この絵でピカソは「キュビズム」の先駆けになった。キュビズムという前衛的コンセプトを打ち出すと同時に、未知なものに挑む人間のための魔除けとしてのストーリー性をも有していた。

西岡氏は『アヴィニョンの娘たち』で、ピカソはコンセプトとストーリーの両方で圧倒的な地位を築いたと指摘をする。そして西岡氏自身にとってはこの絵が「一種の解放」(188ページ)であったという。これほど野放途な好き勝手な絵が許される、という安心感を得たという。前衛は人を不安にする一方で、人を救済する。

蛇足

あなたにとっての前衛とは何ですか?

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