毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アートが価値を持つためには時間と空間が必要~『アートは資本主義の行方を予言する』山本 豊津氏(2015)

アートは資本主義の行方を予言する (PHP新書)

 山本氏は現代美術の画廊のオーナー、アートの「価値」と「価格」の関係にこそ、モノの値段が決まり、ときにそれが暴騰・暴落する資本主義の本質が隠されている。(2015)

 

絵画とは

絵画の値段というのはあってないようなものだといわれます。・・・(ゴーギャンの355億円の絵は)制作原価はキャンバス代と絵の具代だけなら高くても数万円程度でしょう。かりに2万円だとして350億円になったとすると、じつに175万倍になったということになります。・・・価格の伸びシロが一番大きいゆえに、お金持ちが投資する究極の対象は絵画だといわれます。ただし、価値が上がるまでには時間がかかります。資産となるまでの時間に、価値のカラクリがあるのです。(21ページ)

どうして絵画の価格が上がるか?

資本主義経済において「交換価値」は、時に人の思惑でどんどん上がっていく。・・・そして私なりの解釈をさらに加えるなら、出発地点で「使用価値」が低いものほど、時間が経つと「交換価値」が人の思惑で上がる可能性がある。(25ページ)

一人の画家が障害に描く点数は多くても数千点です。世界70億人の人々の中で買うことができるのは数千人しかいないのです。・・・つまり希少性が高い商品だということです。(26ページ)

一切有用性を顧みず、アーティストが自分の好きなように絵画を一枚描いた場合、それは有用性、「使用価値」こそ低いですが、希少性は高い。すると需要があればそれが100万円、1000万円、1億円と値が上がっていく可能性があります。(27ページ)

絵画というのは日常の有用性、「使用価値」が低いがゆえに「交換価値」があがるという、資本主義の価格と価値のパラドックスを象徴するものだということがわかると思います。(28ページ)

絵画には歴史と距離が必要

美術としての絵画は歴史的な流れの中でどのような位置にあるかで判断されます。・・・時代の流れの中で新たな価値を切り開くもの、そしてほんの少しでもオリジナルで独創性のある作品が、“美術”として認められるのです。・・・美術というのは歴史と文化の蓄積の中から生まれてきた価値の体系で、その中で意味を持つものです。(39ページ)

美しさいうのは対象から空間的にも時間的にも距離を置くことで見えてくるのだということ。・・・近代以降の人々の不安や孤独は、神や自然、共同体から離れた結果生まれました。同時にその距離によって、美と美の概念も誕生してきたのです。(209ページ)

アートとは

 

絵画は1枚で350億円を持ち運びができる。そして所有者に教養というステータスを与える。だからこそ絵画は大金持ちにとって、究極の資産形態であり、投資対象になるという。

伝統的な西洋絵画が神と人間との物語性を語っていた。モダンアートは絵画そのもの、あるいは絵画構成する素材そのもの、が作品となり物語性を伝える。故に抽象画が生まれた。絵画と紙幣、どちらも使用価値はほんとなく、すべては交換価値によって構成されている。

蛇足

 

アートとは資本主義の終着点

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