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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

印象派の現代的役割はアバンギャルドのクラシックであること~『印象派はこうして世界を征服した』フィリップ・フック氏(2009)

 印象派はこうして世界を征服した

フック氏は美術オークションの競売人、世界中で最も人気のある美術、それが印象派であることはまちがいない。十九世紀の誕生時には人々の嘲笑を浴びたというのに、わずか百数十年の間になぜこれほどダイナミックな変化が生じたのか?(2009)

 

印象主義

印象主義は19世紀後半にフランスでおこった絵画の革新的運動だが、当初その作品は人々に理解されることはなかった。印象主義は、一般大衆のあいだに美術に対する当惑と激怒を引き起こした最初の現代美術であり、以後、そのような反応は私たちにとってすっかりなじみのものとなっている。(7ページ)

印象主義と写真

それまでの絵画にはない、よりラフな質感と大まかな筆触が、人々の関心を惹きつけたのかもしれないのだ。というのも、当時は台頭する写真と折り合いをつけなければいけない時代であり、この新しい科学技術との近似性が、絵画の世界に同様をもたらしたからである。・・・筆のタッチが際立つ彼らの絵は、写真と見間違われることはまずありえず、そのことが観る者に安心感を与えた。(22ページ)

印象派の終焉

20世紀の初頭には、印象主義はもはや最先端ではなくなっていた。前衛芸術(アバンギャルド)の冠は、どこか別の流派へと移っていった。印象主義の受容をめぐる動きは、それぞれの国でそれぞれの時期に落ち着きをみた。フランスとアメリカでは1890年代までに、ドイツとスイスでは1910年までに、そして英国では1920年前までに。新しい前衛芸術を優れたものとする視点から見ると、印象主義は従順で退屈なものに見え始めた。(68ページ)

1920年代以降の印象主義

1920年代までには、人々は印象派の絵画を、その後に続くマティスピカソといった画家たちによるはるかに挑戦的な作品がもつ過激さから逃れるkとおのできる、安全で、美しい色彩に満ちた楽しい絵として見るようになってきた。・・・今や印象派のコレクションはアメリカの、むしろ古い富を象徴する魅力的な存在となっていった。(114ページ)

印象主義が持つ今日的意味

印象主義がみりぃく的なポイントは)・・・モダンアートの先駆けとして、また自身の生きている時代には理解されなかった不遇な画家として、彼らを長く彩ってきたロマンス。永続する印象派の神話に人々が満足するのは、何よりそれが、人間は進歩しているものだという安心感と、そして過去と照らし合わせて自己満足を感じる機会を与えてくれるからなのかもしれない。なぜなら、印象派の画家たちと同時代に生きていた、心得違いの哀れな人たちにとって、印象主義は理解するのに難しい芸術だったが、彼らの啓蒙された子孫であるわれわれにとっては、それを理解するのはたやすいことだからだ。(272ページ)

印象派はこうして世界を征服した

印象派の絵画は100年前までは前衛的であった。現時点では古典である。印象派ルネッサンス以降の西洋絵画の後継者として、現代絵画の先駆者として捉えられている。我々は写真の登場によって絵筆の触感が稚拙さの証明から人間らしさの証明に変わったことを理解している。我々は画家たちのパーソナルヒストリーを、そして印象派の絵画が巨額の金額で取引されていることを知っている。印象派の絵画はこれらの背景があるからこそ今も輝き続けている。

蛇足

アバンギャルドの古典

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