毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

「京のぶぶ漬け」の意味を知っていますか?~『承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?』太田肇氏(2007)

承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?

 太田氏は組織論の研究者、承認欲求を経営の現場でどのように活かし、人々を
動機づけていけばよいのか?(2007)

 

 

承認欲求とは

「働く人たちの大多数は、自己実現欲求より承認欲求によって動機づけられている」・・・周囲から認められることを求め、承認欲求によって動機づけられる人間を私は「承認人(ホモ・リスぺクタス)と呼んでいる。(13ページ)

京都の保守性

(京都は)どこにも負けないくらい保守的・閉鎖的な風土だということ。・・・俗に3代(十代ともいわれる)住まないと京都人として認めてもらえないとか、「京のぶぶ漬け」に代表されるような京都人にしかわからない習慣や呼吸があるなど、京都(人)の保守性、閉鎖性を物語るエピソードは枚挙にいとまがない。(165ページ)

どうして京都にベンチャーが生まれるのか?

京都ではお金よりも名誉を重んじる。したがって成り上がりが全人格的評価を手に入れることは許さないが、お金持ちになるだけなら比較的寛容に受け入れる。そこにベンチャー企業が台頭する余地があったと考えられる。そしてベンチャー企業は、既存の企業や産業と上手に「棲み分け」をした。・・・保守的・閉鎖的な社会ほど、芽を出そうと思えば新しい領域を切り開き、新しい次元で勝負しなければならない。そうした環境の中で、独立自尊で進取の志を抱く起業家が現れた。保守的だからこそ異端が出やすいという逆説がそこにある。(174ページ)

統制的な裏の承認から自己実現的な表の承認へ

表の承認が得られやすい文化とは、誤解を恐れずに言うなら個人が欲望にしたがって行動することをタブー視しない文化である。(118ページ)

これまで我が国では、「仕事は組織でするものである」という建前のもと、よきにつけ悪しきにつけ(裏の承認として)個人を表に出すことは控えられてきた。・・・考え方を180度転換し、可能な限り個々人を表に出そうというわけである。(123ページ)

「出すぎた杭」になるには?

「出る杭」を打ち、周りとの同調を求める組織・社会風土は、それを逆手に取ることで一気に視界が開けてくる。保守的・閉鎖的な我が国の中でも、それがとくに顕著だといわれる「京都」と「農村」地域。以外にもそこには、個人を認めて育てていくための、また一人ひとりが認められえるためのヒントが隠されている。

・保守的な風土だから異端が出やすい

・単なるオンリーワンではなく、それを組み合わせて+アルファを

・「出すぎた杭」になれば、打たれないばかりかむしろ引き抜かれる

・周囲とずらすことで競合を避けられる

・組織の力を借りる

・声なき声を代表する対抗勢力になる

・・・(あなたの行動が周囲から受け入れなないと)あきらめるまでに是非一度試して欲しい。“出る杭を打つ社会だから、逆にみとめられやすい”ということがウソでないと実感できるだろう。(233ページ)

承認欲求

どうして京都にベンチャーが集積するか?そこには保守的・閉鎖的だからこそ、一度突き抜けてしまうと逆に自由に活動できるという逆説があると言う。京都では3代どころか10代住まないと京都人としては承認されない。住んでいる長さではなく新しいビジネスで承認欲求を追求することで他人から認められたい、というモチベーションが高い効果を発揮することになる。

我々は組織の為という建前の為、自らを、そして周囲を縛っている。しかし一度それを突き抜けてしまうとそこには自由な活動の余地が広がっている。それは組織を飛び出すことだけを意味するのではなく、周囲の同調圧力から精神的に開放されることが本質である。誰でもどこに居ても、「個人はもっと自分の欲求を追求」できる。

蛇足

「京のぶぶ漬け」とはお茶漬けのこと、来客にお茶漬けを口で進めるが、「もうお開きにしましょう」という符号として使われる。

「ぶぶ漬けでもどうどす?」~言葉に隠された京の本音 – 京都トリビア × Trivia in Kyoto

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