自分で勝つ基準を決めるということ~『仕事に必要なことはすべて映画で学べる 』押井守氏(2013)
「機動警察パトレイバー」シリーズなどのヒット作で知られ、世界的に高い評価を受けている映画監督の押井守監督が映画を語る。(2013)
勝つために戦え
簡単に言うと、映画監督における勝敗論では、「負けないこと」が一番大事なんです。僕はそれを「不敗の構造」と呼んでいます。勝つこと自体はたいして重要じゃない。勝負は1回じゃないから、1回の勝負なんてたいしたことはありません。(3ページ)
「勝った、負けた」が幻想であるということと、勝つための勝利条件はみんな個々違うんだということです。・・・だから僕は、「勝つためにこれをやれ」とは一言も言いません。僕が言うのは、「勝つために戦え!ということだけ。つまり、どうせ戦うんなら勝つために戦かおうということです。」
押井氏の勝つ条件
僕の 場合は明確で、監督個人の勝利条件というのは次の1本を撮る権利を留保する、すなわち絶えず次の企画のオプションを持ち続けるということです。自分が温めている企画は他人ではできません、自分じゃないと、この企画は実現しませんよということを絶えずちらちら出すしかない。・・・一番手っ取り早いのは、自分で原作を書くことです。最近小説を書いているのも、広い意味で言えばそういうオプションを広げるためなんです。(257ページ)
敗北の蜜は甘い
「人は負けることの誘惑には勝てない」ということなんです。・・・勝つということは永遠に勝ち続けることですが、一度でも負けると、挫折の周辺を巡るだけで一生自憐憫に浸って過ごすことができる。それくらい敗北の蜜は甘いんです。(13ページ)
映画に飽きないこと
僕は映画に関してだけは飽きなかった。むしろ今は映画に飽きないさまざまな努力をしています。それは「映画館に行かないこと」です。・・・僕は自分の「映画の正体」を知りたいと思ってやっているだけです。だからいろんな映画を試します。実写を撮ることだってそうです。映画はどういうふうにできるのか、映画の本質とは何なのか。それを知るためにいろんなことをやってみようと思っています。そのおかげで映画に飽きずに今まで続けることができました。(143ページ)
仕事に必要なことはすべて映画で学べる
本書で押井氏は映画の各場面から、映画の底流に流れているものを説明する。更に自分がどうやって映画監督として取り組んでいるかを説明する。押井氏は映画を通じて自己表現すること、と考えている。彼は、様々な映画のシーンに込めたそれぞれの監督の自己表現をを読み解いていく。
押井氏は勝つことを要求する。勝つ条件は人それぞれだが、押井氏の場合は負けないこと、であり、常に次の映画を作り続けられる権利を持ち続けること、という。押井氏の目標は映画とは何か?を考え続けることであり、映画監督はそのための一つの手段に過ぎない。映画とは何か、を考え続ける限りそこには限界は存在しない。プロフェッショナルとは飽きないことであった。
蛇足
ゴールは自分で決める
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