毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

デジタル化とは目に見えない情報が減り目に見える情報が増えること~『宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド氏(2007)

宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?

ロイド氏は量子コンピューティングの研究家、宇宙は何のために存在するのか? それは、計算をするためである。何を計算しているのか? それは、宇宙自体、すなわち自分自身である・・・・・・超微小な粒子を扱う量子技術の向上につれて発展してきた量子情報理論によれば、宇宙とは巨大な量子コンピュータであり、自らを計算によって作り出しているという。(2007)

 

銀塩写真とデジタル画像の情報量を比較する。

原子のダンスを記述するのに必要な情報のビット数は、われわれは見たり知ったりできるビット数よりはりかに大きいのだ。一枚の写真を考えてみよう。写真はそもそも、フィルムを構成するハロゲン化銀の粒に相当する粒状性を持っている。高画質のデジタル画像なら、10億ビットもの目に見える情報を記録できる。・・・フィルム写真の場合、ハロゲン化銀の粒に含まれる原子の見えない振動を記述するのに必要な情報量はもっとずっと多くなる。…目に見えない振動をする原子は、その原子が作り上げる目に見える写真よりもはるかに大量の情報を記憶している。…写真乗の原子が記録している情報量の合計は、10の23乗ビットとなる。デジタル画像として写真上に見える情報はたった10億ビット(10の9乗)で、全情報量のごくわずかでしかない。写真の物質に含まれる残りの情報は目に見えない。この見えない情報が、原子のエントロピーなのだ。

熱力学の第二法則は情報について語っていた

個々の物理系はあるビット数の情報―目に見えないもの(エントロピー)も目に見えるものも含む―を持っていて、その情報を処理して変換する物理的ダイナミクスがビットの総数を減少させることは決してない、ということだ。(88ページ)

宇宙は計算している 

 本書のテーマは「あらゆる物理系が情報を処理していて、宇宙の計算の仕方を理解すればなぜ宇宙は複雑なのかを知ることができる。」(87ページ)である。宇宙の初期状態が一つだとすれば、情報量はゼロ=無である。そこからインフレーションによってエネルギーが発生し熱に変換される。この高温状態の中から素粒子が生まれ情報量は膨大に膨れ上がっていく。量子コンピュータの研究家である著者はこれを宇宙が物理系を使って計算した結果だと説明する。

デジタル写真が画像という目に見える情報がごくわずかの電子信号によって記憶されている。一方銀塩写真は目に見える情報を記憶するためにハロゲン化銀を使っており、そこには原子の振動=目に見えない膨大な情報が存在する。つまり目に見える情報の割合が増えることになる。

宇宙は誕生以来、宇宙全体の情報が消滅することはない。宇宙の進化は目に見えない情報が目に見える情報に進化をしていく過程であった。同時に、デジタル画像の為にはコンピュータという複雑な計算機が必要である。宇宙は複雑になる様にプログラムされている。

蛇足

 デジタル化とは目に見える情報の割合が増えること

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