毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

サハラ砂漠、難民キャンプ、マラソン、すべてが非日常~『世にも奇妙なマラソン大会』髙野 秀行 氏(2010)

世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)

髙野氏はノンフィクション作家、 サハラ砂漠でマラソン!? ある深夜、ネットでサハラ・マラソンなるサイトを見つけた著者。酔った勢いで主催者に参加希望のメールを送ったところ、あっさりと参加を認める返信がきた。(2010)

 

難民キャンプで行われるマラソン大会

 

 このマラソンは、北アフリカアルジェリア領で行われるが、そこは難民キャンプらしいのだ。「西サハラ」ことサハラ・アラブ民主共和国の人々が住んでいるとある。(16ページ)

西サハラ

 

 どうやら西サハラ問題は何も進展がないままで、サハラ砂漠の真ん中に難民とポリサリオ戦線の兵士たちが置き去りになっているらしい。サハラ・アラブ民主共和国の亡命政府もそこにあるという。そして、彼らの困窮を国際社会に訴え、少しでも役に立とうおということで、10年前にこのマラソン大会がはじまり、今度で10回目を迎える。つまり一種の市民運動なのだ。(18ページ) 

サハラ・アラブ民主共和国

西サハラ1969年まではスペイン領サハラ、面積26万6000平方キロメートル、人口約27万人(2004年)。亡命政権であるサハラ・アラブ民主共和国モロッコ王国が領有を主張している。多くの地域をモロッコが実効支配(不法占拠)しているが、モロッコによる領有権の主張は大多数の国から認められていない。(Wikiより)

西サハラを支援するボランティア

 

西サハラ関係のイベントに参加した人たちを中心に、ふつうの個人が西サハラの子供を2年や3年も自宅であずかり、生活の面倒をみて、学校へ行かせるというのである。・・・真難民キャンプや内戦では、「子供の教育」が最も重要な問題の一つだ。先進国で生活をし、勉強ができれば、たとえ2年程度であっても、この砂漠の閉じた世界で暮らすより桁違いの見識が得られる。民主主義の概念、インターネットの利用、国際社会の仕組みなどを理解することができる。(67ページ) 

マラソン大会のボランティア

 

ずっと私たちがボランティアで、頑張っている西サハラの人たちを応援しているつもりだったが、このマラソンではくるんとひっくり返っている。私たち外国人がへろへろにになり、西サハラ人が支援ボランティアに回っているのだ。西サハラ人を支援するためのマラソン大会は、西サハラ人のボランティアに支援されて開催されている。世にも奇妙なマラソン大会である。(116ページ) 

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世にも奇妙な話

 西サハラ、難民キャンプ、砂漠、そしてマラソン大会。マラソン以外はすべて非日常である。

難民キャンプといっても30年以上放置されているのである。30年ともなれば西サハラの人達はテントではなく家を建てている。

マラソン大会の参加選手は西サハラの難民キャンプに暮らす人たちのサポートを受けて走る。あべこべである。

高野氏によれば砂漠は実は変化に富んでいるのそうだ。アップダウン、深い砂、岩が隠れた砂、草木が無くても豊かといえるほどだという。

この奇妙なマラソン大会は今も続いている。

髙野氏は奇妙なことに飛び込んでいった。髙野氏は世の中にはまだまだ奇妙な話があることを教えてくれている。

蛇足

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