毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

安心していい、資本主義は自分の違いを表現する事を望んでいた ! ~『ポスト消費社会のゆくえ』辻井 喬×上野 千鶴子(2008)

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)

消費社会論の研究者でもある上野千鶴子氏が元グループ総帥・辻井喬(堤清二)氏へのインタビューを通して、ポスト消費社会をどのように再構築していくか、その手がかりを探る。

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1982年、セゾングループの絶頂期

 

 

セゾングループとは

セゾングループ西武鉄道グループの流通部門から出発し、1980年代初頭に最盛期を迎え、バブル崩壊後の1990年代にグループは解体される。

 

民主主義と市場経済

 

 

上野)民主主義が意志決定メカニズムといして優れていることが、20世紀の歴史の中で経験則から証明されたわけです。その経験則とは一人の賢者の判断よりも、百の凡人の意思決定の集合のほうが、結果的に最適解に達っするという命題です。それだけのことで、最終的には市場経済計画経済に勝った訳です。ただ市場の意思決定は民主主義ですが、企業組織の意思決定は民主主義ではありません。(216ページ)

 

資本主義

 

辻井)私は自分自身への自戒をこめて、「経営者にとっては、常に自己が否定されるような環境をつくることが、企業の自己革新能力を維持する上で必要不可欠な作業になってきている」と「自己否定の論理」を社員に述べています。1976年ですから景気が上向きの頃でした。

上野)自己否定は資本主義の論理そのものですからね。(72ページ)

経営共和主義

 

 

辻井)「経営共和主義(1968年)とはなにか」ということですが、経営共和の場合、共和制の場合、共和制である以上、権力がいくつかに分散しています。それは消費者であり、社員であり、株主であり、そこに経営が入る。・・・ですからどの権力も一方的な権力行使は出来なくなる。これが私の考えた説です。ところが経営共和主義で行くと言えば言うほど、独裁制が強まるという感じになってしまったんですね。(213ページ)

 

意思決定の仕組み

 

 

辻井)粗雑な分け方として論理によって到達できる結論は、民主主義が適合するけれど、完成に依拠する決定は民主主義をうまく使えない。(142ページ)

 

 

上野)法人資本主義の一つの条件として、組織を非人格化するためには、情報公開と常用の共有が条件ですが、(辻井氏は)それが出来なかったと言っておられますね。(227ページ)

 

最適な企業統治の方法はどこにあるか?

 

辻井氏はオーナー経営による昔ながらの百貨店を変えたかった。法人資本主義を目指し、「共和経営主義」を謳う。市場の価格メカニズムが優れている事は結論が出ている。資本主義は「自己否定」と言われて、私自身「そうだったのか」と思った。価格メカニズムは常に均衡を求めていく、そしてそのゴールは静止した世界である。資本主義は市場に「自己否定」を以て動きをもたらす。「自己否定」とは既存の否定であり、「他と違う事」である。そうか、資本主義は「他の違う経営」を探しているのだった。そし法人は「他の違う経営」を会社全体で統一した方法で、かつ非民主的な形で運営していく。市場、資本主義における企業価値、そして会社の運営、それぞれが違う発想を必要としている。

蛇足

 

我々は他者との違いを表現しなければいけない。

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