毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

日本の森林率は何パーセントだと思いますか?~『森と日本人の1500年』田中 敦夫氏 (2014)

森と日本人の1500年 (平凡社新書)

田中氏は森林ジャーナリスト、今ある緑はどんな経緯を経て生まれたか。現代につながる森と人の歩み。 (2014年)

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 明治時代以前

 

江戸時代は、薪や炭こそ山の重要産品だった。都市部へ薪炭を供給することが、山村の最大の役割であり、現金収入の道だったのだ。・・・薪を大量に使うのは、鉄や銅など金属精錬に加え、陶器や瓦などを焼く窯業、製塩業、さらに和紙づくりは染色業、和三盆(砂糖)まで幅広い。その点に着目すれば、森林はエネルギー資源であり、薪の生産はエネルギー産業だったのだ。(38ページ)

 

 
明治時代

 

 明治期は山が最も荒れていた時期である。造林・緑化も行われるが追いつかず、相次ぐ戦争も乱伐をもたらした。太平洋戦争後は、大造林が行われた。荒れた山々で災害が頻発したこともあるが、戦災からの復興、続く経済成長時代に木材需要が爆発的に増え、木材価格が高騰したからである。

 

日本の林業は未成熟

 

 戦後の復興資材として木材不足が続いたから、どんな木材でも高値で売れる(買い手はしぶしぶ買う)状態だっただけなのである。明治以降山に木を植える政策は推進されたが、それを育て、産業としてのシステムを築くことに大半は失敗した。木を植えても、その後は放置された。植えた後の育林技術がない。間伐も必要性が理解できない。(176ページ)

 

 

現在の森林率67%

 

人工林面積は1951年の時点で497ヘクタールだった。それが2012年には1029ヘクタール。1000万ヘクタールを超すのは1980年代だから、戦後約30年間で倍増した。・・・国土に占める森林の割合を示す森林率で比べると、明治初期で約45%、現在は約67%である。つまり22%も上がったことになる。これほど短期間で森林率を高めた国は、世界でも希有なのではないか。(48ページ)

今や輸入材が主役

 日本の国土は今やかつて無いほど緑に覆われている。化石燃料の普及、輸入木材の普及により木材への需要が縮小したからである。戦後の植林から50年を経過、スギを中心とした人工林は伐採時期を迎えている。輸入木材に依存した結果、国産木材は供給という点からは主役の座をおり、「役物とは美しく見せる部分に使われる」木材(194ページ)としての付加価値に活路を見出しているという。

世界では今だ薪と炭に依存

そして世界に目を広げると薪や炭をエネルギー資源として使用している地域が多々ある。世界には乱伐採が未だ行われている地域が沢山ある。環境付加の点からは化石燃料の方が薪・炭より環境負担が少ない。

蛇足

最後に薪と炭を使ったのはいつ?

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