毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

醤油、味噌、そしてケチャップ、調味料の多くはなぜ発酵食品か?~拮抗作用というキーワード

発酵食品礼讃 (文春新書 (076))

バター、チーズ、納豆、鰹節から火腿、野鳥の塩辛、珍酒まで。世界各地で伝承されてきた食生活にひそむ「発酵」というステキな智慧、1999年発刊

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拮抗作用

微生物の世界では、ある生息環境下に一定数以上の微生物が存在すると、その微生物のみが繁殖してそこを独占して、他の菌がいくら押し寄せてもその侵入や繁殖を許さないという「掟」のようなもの-専門的には「拮抗作用」という現象があるので、牧草地帯では乳は乳酸菌により立派に発酵させるのである。

抗菌性物質

そのような拮抗現象を引き起こす物質、すなわち自らが生産して相手の菌の生育を抑える物質を「抗菌性物質」(抗生物質)というが、多くの種類があることがわかった。・・・麹菌は麹酸という物質をつくってブドウ状球菌を抑えるし、青カビはペニシリンという極めて複雑な化合物をつくって様々な悪性菌を抑える。

 

とにかく自然環境下では、このようなお互いを殺し合いながら、発酵菌と腐敗菌との生存が激しく行われていて、発酵菌が勝利すれ発酵物という素晴らしい恵みものを人々に与え、逆に腐敗菌が勝つと、それは危険が渦巻く怖い腐敗物になる。

 

乳酸菌が生成する乳酸菌という生成物

乳酸は抗菌性を有し(乳酸そのものの抗菌性と、乳酸の生成によって水素イオン指数が大きく酸性側に傾き、その領域内で生育できない腐敗菌や雑菌は抑えられる、多くの腐敗菌の繁殖を阻止するから、草原の牛乳は円滑に発酵乳になることができるばかりでなく、酸味がでてきて爽快な味となり、特有の発酵香も付与され、その上栄養成分は飛躍的に高まるなど、まさに天の恵みを得ることになるのである。

 

発酵食品を俯瞰してみると

発酵菌と腐敗菌、細菌としてはまったく同等である。人の役に立つのが発酵菌、立たないのが腐敗菌。人間が発酵食品を初めて利用利用したのは約6000年前頃と考えられている。乳酸菌、麹菌、酵母菌、麦芽菌など名前を付け重用してきた。これらは発酵菌自らの増殖を行う為に腐敗菌の増殖を抑える拮抗物質を持ち、同時に食品の味を変化させる物質を生成する。人間は生活環境に無数に存在する細菌の中から発酵菌だけを選択活用している事になる。調味料の多くが発酵食品であるのは、拮抗作用と風味改善の両方を一辺に活用できるからである事も合点が行く。

一方拮抗作用だけに着目したもの、それが医薬品としての抗生物質という事になる。

拮抗作用という言葉が発酵の意味を明確にしてくれる。

蛇足

腐敗菌は人間に食べられない様にするという役に立っている。

  

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