毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

最初のトマトケチャップは甘くなかった、常識は短い時間軸に囚われている

トマトケチャップと言えばオムレツ、ハンバーグ、エビフライ、子供が好きな甘いソース。

 トマトが野菜になった日―毒草から世界一の野菜へ

本書は1999年、カゴメ(株)の創業100周年を契機としてトマトの歴史についてまとめている。

ケチャップの綴り

アメリカのスーパーマーケットに並んでいるトマトケチャップの表記に、いろいろな綴りがある事をご存じだろうか?

Ketcup,Catsup,Catchup、これほどポピュラーな食品でありながら、綴りが統一されていないのは、どうしたことか?大手メーカーであるハインツは1876年にトマトケチャップの生産を開始して以来、KetchupとCatsup両方の綴りを使っていたが、1900年代の初めに正式に「Ketchup」を採用した。一方ライバルである、デルモンテは長い間[Catsup」にこだわっていたが、顧客からの要望が強まり、とうとう1988に「Ketchup」に変更を余儀なくされた。

このように綴りがまちまちになったのには理由がある。「ケチャップ」はもともと英語ではなく、どこかの国の言葉が語源なのだ。およそ150年の間、アメリアでは、ケチャップの正しい綴り論争と、ルーツ探しが行われきたともいえるが、そのなかで有力視されたのは、中国語のKetsiapあるいはKoechiapである。(166-167ページから再構成)

f:id:kocho-3:20140128073200p:plainDel Monte Tomato Catsup - 1960

1960年代のデルモンテ社(D社)のトマトケチャップの広告、綴りに注目。

トマトケチャップを子供用のソースから大人用の料理ソースへ展開させたいというD社の意図を感じる。

ケチャップは17世紀東南アジアの発酵食品に由来

これは魚などを塩漬けした汁のこと。つまり漁醤である。ケチャップは、魚を原料にした発酵調味料「醤」がルーツであり、やがて豆や穀類、野菜を原料にした「醤」のバリエーションが生まれ、そこに新しい野菜であるトマトも加わったと想像することができる。ケチャップに関する最も古い文献は17世紀に編集されたもので、ここでは「東インド(現在のインドネシア)のソース」と呼ばれているという。(168ページ)

砂糖とビネガーを加えたトマトケチャップ

酸味を強くするために砂糖を加え、酸味を抑えるためにビネガーを加える。なんだか矛盾するようだが、甘みと酸味のバランスを保つために、砂糖の量が増やされ、ビネガーの量が増やされた。最終的にトマトソースよりはるかに甘酸っぱいソース、トマトケチャップが誕生した。使われる砂糖の量が急激に増えるのは、二十世紀半ばになってからのことだ。

著者はトマトケチャップはアメリカの醤油であり「アメリカにおけるトマトケチャップの消費の59%は子供たちによるもの」と説明(184ページ)

トマトケチャップに関するトリビア

・日本におけるトマトの生産は大根、ジャガイモ、キャベツ、タマネギに次いで第5位。そのうち加工用は10%を占める。

ケチャップの市場規模は約190億円、醤油の市場規模は1,600億円。

・日本での生産開始は1908年、蟹江氏(カゴメの創業者)が名古屋でトマトソースを作った所に由来。カゴメ株式会社 > 企業情報トップ > 会社案内 > カゴメの歴史 > 1899年〜1959年

蛇足

トマトケチャップは発酵食品、最初のケチャップは甘くなかった。自分の常識が如何に短時間の時間軸でしか見ていないか痛感する。