毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

透明マントは実用化に向けた取り組みが始まっていた~メタマテリアルが光をコントロールする!

透明マントを求めて 天狗の隠れ蓑からメタマテリアルまで (DISCOVER SCIENCE)

 透明人間になってみたい。誰しも一度は考えたことがあるはずだ。その証拠に、被ることで透明になることのできる『透明マント』が、古今東西様々な時代の文献に登場する。その、長らく実現されることのなかった夢の技術に、今、手が届こうとしている……。

 

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212ページ~光の流れに影響を与えない物は見えない

 

英インペリアル・カレッジ・ロンドン、ジョン・ペンドリー教授が現代の透明マントの創始者

彼の人生を変えたのは、2006年にサイエンス誌に発表した2本の論文である。(中略)

1本目は「光をコントロールする」と題された論文であり、分かりやすく言ってしまえば「透明マントの作り方」を理論的に論じたものである。この論文は、理論家であるペンドリーの才能が十分に発揮された内容となっており科学界に衝撃を与えるものだった。(中略)1本目の論文からわずか5カ月後、ペンドリーは実験物理学者であるデイヴィッド・スミスと組んで、自らの理論のもと、リングの形をした透明マント(専門用語でクローキングと称される)をつくり上げることに成功する。(188ページ)

屈折率分布を持った光

ペンドリーが2006年に発表した衝撃的な論文で言及したのは「全方位の透明マントを作り出す為に、対象周辺の“「屈折率分布”をどの様に設定したらよいか」という点だった。(中略)

「作りたい透明マントがあった時に、いきなりその屈折率分布を求めるのはあまりに難しい。屈折率分布を持った環境下での光の軌道を、何か別の環境下における光の軌道に置き換えて考えられないだろうか?」屈折率分布を持った光は変幻自在に曲がって進む。曲がる光―そんな言葉を聞いたことがないだろうか。そう、リーマンとアインシュタインが考えた重力下(曲がった空間)における光の軌道がここで再登場するのである。(219ページ)

空間が曲がったことよって光が屈折する

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空間が曲がったことに伴って、一律だった網目の形とサイズが場所によって変わってくるに違いない。網目の形とサイズを変えることができるーこれを使ってチャーリーが全く網の挙動に影響を与えないようにすることができるだろうか?答はイエスである。網目の一つを大きく引き伸ばしてみよう。そして出来上がった穴(正確には小さかった網目を引き伸ばしたもの)にチャーリーの体をすっぽり入れれば、透明人間チャーリーの完成である。(中略)「曲がった空間における光の進み方」と、「屈折率分布を持った物質中の光の進み方」が、全く同じであることを見いだしたのである。(224ページ)

透明マントは特殊な磁気特性を持つメタマテリアル

ついに出来上がった世界で最初の透明マントだが、実はこれはマイクロ波にとっての二次元での透明マントという但し書きがつく。可視光よりも周波数がずいぶん小さいマイクロ波は、回折限界となるサイズが比較的大きく、それゆえに数ミリ平方の銅線回路を認識できない。だからこそ装置の周辺に特殊な磁気特性を持つ原子が並んでいるかのように見えるのである。(232ページ)

 

メタマテリアルは既に産業界で実装に向けた取り組みが始まっている。光の屈折を変える事は透明マントの逆さま、つまり分解能力の向上も可能とする。

メタマテリアルには、まだ正式な定義がありませんが、私たちは、電磁波に対して、自然の物質の限界を超えるような特異的な性質をもたせるように設計した人工物質と捉えています。」超の世界 | 宇部興産株式会社

蛇足

光を操作する=重力を操作する、様に感じる。