毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

宇宙人はハンガリー人、もう地球に来ている。

 フォン・ノイマンの生涯 (朝日選書) 

マクレイ氏は英国出身のジャーナリスト、原書は1992年の出版。本書帯は「その底知れない知力によって悪魔とも宇宙人とも呼ばれた男―量子論、ゲームの理論、原水爆、コンピュータ、数値気象学…を立ち上げ、20世紀後半の科学と社会を基礎づけたハンガリー出身ユダヤ人科学者の足跡。 」

 

マクレイ氏はノイマン博士を評する。

業績を上げ続けたという点でジョニーは二十世紀屈指の数学者ーどころか、人間がかつてな速さでものごとを処理できる道をつけたのだから、史上もっとも偉大な数学者だったといってもいい。(6ページ)

学問分野あれこれにもぼしい進歩がないのは、数学がまだ熟していないからではないか?「ギリシャ語やサンスクリット語が歴史の産物であって絶対の必然性などなかったように、論理学や数学も歴史の産物、たまたまできた表現とみるのがたぶん正しい。」またもこう考えた「数学もいわば二次言語である。脳の中枢神経系には根源の一次言語があって、数学も、その上に構築された言語のひとつにすぎない。」生涯を通じてジョニーは、新しい概念と表現を追い求めた。(16ページ)

人間がかつてない速さで処理できる道=ノイマン型コンピュータ

  プログラム内蔵方式のデジタルコンピュータで、CPUとアドレス付けされた記憶装置とそれらをつなぐバスを要素に構成され、プログラムとデータを区別せず記憶装置に記憶する。(Wiki)

 

ノイマン型コンピュータの意義

私にとってノイマン型コンピュータの革新性がいま一つ理解できなかった。現在のコンピュータは皆プログラム内蔵型のノイマン型コンピュータであり、それ以外のものが想像つかないからである。ノイマンはコンピュータをプログラム内蔵型にする事でコンピュータの立ち上げ時間を無くし、一つのコンピュータで様々な計算を行う事が簡単にできる様になった。これがコンピュータの計算能力を飛躍的に向上させる事に繋がる。人類はこの計算能力を使って原爆を完成させ、気象学にシュミレーションの概念を持ち込み、そして現在のITに繋がったと理解した。

 

原爆の開発の為に物理学者、数学者が多数研究に従事していたがその一人がノイマン。そしてロスアラモスで一大勢力だったのがハンガリー人。ロスアラモスで語られた冗談が「火星人はハンガリー人にばけてこの地球に来ている」と。これはノイマン博士を筆頭とするハンガリー出身物理・数学学者が居ての事。

花の都ブタペスト~オーストリア・ハンガリー帝国の首都

ジョニー(ノイマン博士)の生まれた1903年のブタペスト市が正にそうで、科学・文学。美術・音楽、更には国際ビジネスを仕切る天才をきら星の様に送り出した。一都市が生んだ天才の数でブタペストに肩をならべるのは、イタリアルネッサンス期の都市国家くらいなものであろう。1867年から1913年までの四十六年間、ブタペストはヨーロッパ一の経済成長を誇り、内にこもりがちの民主主義ではない、のびのびした金権政治が、街いっぱいに陽気さをかもし出していた。(33ページ)

ブタペストにいたジェニー(ノイマン博士)と同年輩のユダヤ人から著名な数学者や科学者がひきもきらずに出たのはなぜか、共通点はえり抜きの両親を持つところである。1890年代にニューヨークではなくブタペストを目指した人たちだった。金持ちはブタペストを目指すパターンが生まれ、そして理想の高校教育制度と相まって天才たちの世代を生み出した。(46ページ)

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1913年の地図、オーストリア・ハンガリー帝国はヨーロッパの1/3をしめ、その中心地はブタペスト。

ブタペスト、私にとっては接点のなかった街、オーストリア・ハンガリー帝国の時代に知の集積があった事を知る。

 

「宇宙人」を育てるには?

(ノイマン博士の)父マックスは食事どきの会話や読書の手ほどきを通じて、落ち着きとユーモアの感覚、考えるのが楽しいと思う心を息子に植え付け、そのおかげで大人になってからも対人関係を見事に切りぬけながら大仕事をこなせた。(102ページより訳者が再構成)

 

蛇足

私も私の家族も「宇宙人」ではないが、これから実践できる。