毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

鉄と帝国、3000年前から今日まで、

鉄を生みだした帝国―ヒッタイト発掘 (NHKブックス 391) 大村氏はヒッタイト発掘の研究者。「忽然と歴史から消えたヒッタイト帝国が、約3,100年の長い眠りから目覚めたのはわずか75年前のことである。ヒッタイト民族が鉄と軽戦車を駆使し、前17世紀から前12世紀にかけて、オリエント世界世界で一大勢力を持ち、一時はエジプトさえ脅かしたにもかかわらず、その背景にあったとされる鉄の問題がそれほど究明されていない。(まえがき)

キズワトナ文書(BC1300-1250):ヒッタイト帝国の王ハットゥシリ3 世のエジプトの王ラムセス2 世宛ての手紙

あなたが私に書いてきた良質の鉄に関してでありますが、良質の鉄はキズワトナの 私の倉庫できらしております。私が書きましたとおり、鉄を生産するには悪い時期なのです。 彼らは良質の鉄を製造中です。 今のところ作業は終わっていません。 出来上がりましたら、私はあなたに送りましょう。今日のところは私はあなたに一振りの鉄剣を送ります。( 49-50 頁)

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左図 Wikiヒッタイト: 当時のヒッタイトとエジプトは二大大国で覇を競う。

右図 64ページ

ヒッタイト帝国にとって、本陣ともいうべきこの地域は、(中略)燃料(まき)、鉄鉱石(砂鉄とも考えられる)、季節風を利用できる地形、どれをとってもこの地域の中で可能である。(66ページ)

 

大村氏は製鉄が行われていた場所をアラジュホイクの遺跡の発掘を通し、ヒッタイトの製鉄が行われていた地域と特定する。

どうやって製鉄を行ったか?そしてそれはどういう意味を持ったか?

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左図:マンガおはなし科学史松本泉原作 佐々木ケン作画47ページ

右図アジア史論 宮崎市定50ページ(黒丸はヒッタイト帝国の位置)

大村氏は1981年本書出版以来現在に至るまで30年にわたり発掘を続けている。ヒッタイトは「単に鉄を有してたからではなく、常に「鉄」の先端技術、良質の鉄 『鋼』 の技術保有が周囲を圧倒し、大きな社会変革・帝国成立をなし遂げた」と説明する。

愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター −活動 11. 第2回 国際シンポジウム−

アナトリア考古学研究所概要

蛇足

宮崎市定氏は青銅器文明は都市国家を、鉄器文明は騎馬戦術を可能とし帝国の性格を持つ領土国家につながると説明する。