毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ドアは押すべきか、引くべきか、それとも開かないか?

 誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

ノーマン氏は心理学、認知科学の研究者。「この本は毎日使う道具の心理学に関する本である。」と書いている。 

アフォーダンス

アフォーダンスという言葉は、事前の知覚された特徴あるいは現実の特徴、とりわけ、そのものをどう使うかを決定する最も基礎的な特徴の意味で使われている。(14ページ)

   写真:左が押すドア、右が引くドア

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日常使うものをデザインする為の7つの原則

①外界にある知識と頭の中にある知識の両方を利用する。

②作業の構造を単純化する

③対象を見える様にして、実行の隔たりと評価の隔たりに橋をかける。

④対応づけを正しくする。

⑤自然の制約や人工的な制約などの力を活用する。

⑥エラーに備えたデザインをする。

⑦以上のすべてがうまくいかないときには標準化する。

(310ページ)

ノーマン氏は③について「実行時には何が可能か、評価時にはどんな効果を及ぼしたか?を示す」事と説明する。ドアのアフォードの例でいえばドアのデザインによってこのドアが押すことができるか、引く事ができるか、が明確に提示されている事になる。一方評価には常に人間が思考するというプロセスが入ってくる。

認知科学における思考の理論

ノーマン氏は思考をA数学的論理性とスキーマ理論とBコネクショニズム(記憶の重ね合わせ)の2つのアプローチに言及している。Aは個々の構造には論理と秩序(スキーマ又はフレーム)があり、人間の記憶は連想的に複数のスキーマを関連ずけ、一つのスキーマから演繹的に他のスキーマに転用可能であると説明する。Bは繰り返し同じパターンの記憶から一つの記憶の「重ね写し」を合成すると説明する。(188-192ページから再構成)

経験値か思い込みか?

私は「記憶の重ね写し」は「経験に基づく暗黙知」と「思い込みによる自制」の両面を持っていると思う。ドアの例えれば、ドアの形で押すか引くか瞬時に判別できるとも言えるし、ドアを開けられないと思い込んでいる人はそもそもドアを押そうとも引こうともしない。

蛇足

本書は1988年!の発行。ノーマン氏は外界の知識に加え記憶も蓄える「ポータブルコンピュータ」の可能性について触れる。現在のスマートフォンはノーマン氏のリクエストを満たしたであろうか?