毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

複雑系~人の素朴な錯誤への科学的反証

若田光一船長のTwitterから

 

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若田船長、11月17日撮影東京の夜景から、フリースケールを連想する。

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

マーク・ブキャナン氏はサイエンス・ライター。

 

グーテンベルグ・リヒター則

本書で最初にでてくる例が地震。

地震の発生頻度と規模の関係を表す法則、マグニチュードが1上がると発生頻度は1/10になる事を示す。これは地震の大きなと発生頻度に「べき乗」の法則がある、つまりある地域で次に起こる地震の大きさは予測不可能であるという事である。

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グーテンベルグ・リヒター則 - Wikipedia 縦横軸とも対数表示になっている事に注意

 

べき乗~人の素朴な錯誤への科学的反証

私の理解ではべき乗の法則の持つ意味は複雑系に属する振る舞いをするものは予測不可能であり、スケール普遍性や自己相似形を持つという事。「べき乗の法則」は人の素朴な感覚が時に大きな間違いを起こす事を説明する。本書で著者はまずじゃがいもを投げて壁に衝突させその破片の大きさの分布がスケール普遍性を持つ事を紹介する。この意味は「大きい破片は小さい破片を拡大したものにすぎない」=「じゃがいもの破片の大きさを予測する事はできないし、大きい破片に何か重要な秘密が隠されている訳ではない。」という事である。大きな破片にメッセージを見いだす事が無意味だという事である。一方人は「生物の絶滅」、「森林火災」「株価の変動」「戦争の規模」など大きな出来事がに大きなメッセージを示していると考えてしまう。人の素朴な感覚から生じる錯誤である。

 

物理法則から人間の行動への拡大

著者はこれが人間の行動にも当てはまると言う。その中の一つのエピソードが都市の人口の分散である。

ある都市における1年間の人口変化の数は、人口そのものに比例すると過程した。つまり人口が多いほど人口の変動は大きいということである。(中略)人間の集合体としての「都市」は必然的に成長し、人口に対する「べき乗則」が再現される。経済的要素や地理的制限は考えなくともよいのである。世界中における都市成長の過程は、ある意味我々が考えているよりもはるかに単純なのだ。(264ページ)

 

蛇足

資産の分布もべき乗則に従っているという。この意味する所は投下する資産に変化率は比例する、という事。人の才能や努力で決まっているのではなくこれに気づき、チャレンジしつつづけるか否か、という事。勇気づけられる。