毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

「世界征服」は可能か?  東京エレクトロンとアプライドマテリアル

半導体装置メーカー世界第1位の米国アプライドマテリアルズ(以下AMAT)と第3位の東京エレクトロン(TEL)が経営統合を発表した。 両社合わせて世界市場の25%、前工程の重要装置であるエッチャーで言えば60%以上の世界シェアを握る事になる。AMATは、あるいは両社は世界征服を企んでいるのか?

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

岡田氏はアニメ会社経営を経て幅広く活動されている方。

あなたが世界を征服したとしても、実はそんなに「うまみ」がない、ということになるんです。あなたやあなたの一族、友人たちが「支配階級」を作っても、その人たちだけでのために作られる「贅沢」など今の自由社会・大衆社会の「金で買える贅沢」に比べれば取るにたらない。(中略)世界を征服して「富を独占」することには、意味がなくなってしまいました。富を独占するのではなく、市場を活性化して、みんなが豊かな世界を作ること。それが支配者がもっとも簡単かつ確実に「栄耀栄華」を楽しめる方法なのです。(175ページ)

 本書は2007年、アニメ・漫画に登場する「世界征服とは何か?」という切り口で現在の構造分析につなげている。支配者はAMAT、被支配者はTELという構造、支配者はAMAT+TEL、被支配者は:半導体市場、という構造で見ても上記の分析が当てはまる。半導体が量子コンピュータへとパラダイムシフトをするタイミング、世界の「富や贅沢」はそれを実現する知的イノベーションであり、イノベーションが辺境から生まれるとすればその成果を独占する事は出来ない。両社には「みんなが豊かな社会」を実現させる世界への貢献が求められている。