毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

原点は中学生のクラブにあった?~『巨大アートビジネスの裏側』石坂泰章氏(2016)

巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)

 巨大化し続けるアート市場。虚々実々のオークション舞台裏をサザビーズジャパン前社長が明かす。(2016)

 

 

どういうアートが値上がりするか

価格は美術史の中での評価と受給バランスで決まると書いたが、評価される偉大な作家の条件とは何だろう。技量、独創性とともに、その作家を抜きに後世の美術史を語れるかどうかが、その作家が美術史に残る作家となるかどうかの分かれ目となる。・・・ピカソは後世の作家たちをさんざん悩ませた。・・・コンテンポラリーアートを含めて、ピカソの影響を受けなかった作家はいないと言っても過言ではない。(71ページ)

なぜアート市場は拡大し続けるのか?

全体でみればアート市場が今後も拡大し続けることは間違いない。これは人類が感性の時代に突入したことに先取りしている。古代では腕力が一番世の中を支配し、そこに富が集中した。次に様々な工夫を生み出す知が全盛の時代になり、自動車、冷蔵庫が誕生した。ところが自動車などに留まらず、我々の住む世界のおよそありとあらゆる品と言わず、サービスまでもがコモディティ化した。つまり、性能に大差のない、特別感のない日常品と化した。ブランド品しかり、ファッション然りである。その中で世の中に一つしか存在しない、究極のオンリーワンとして異彩を放つのがアートだ。(119ページ)

アートの産業化

アートは趣味の領域を超えたグローバル産業となっている。・・・今後は世界を視野に入れ、産業として対応した国、街だけが勝ち残り、それ以外はグローバル化の中で、世界どころか国内の競争にも負けてしまう。・・・この一連の流れは、趣味が高じて産業となったオリンピック、プロ野球、F1レースが辿った道に似ている。いずれも、最初は同好の士が集い、競い合っていたに過ぎなかった。それも、ほとんどは持ち出しベースだった。しかし、規模が拡大してグローバル化し、巨額の放映権当が発生するにつれ、一大スポーツ産業となった。(191ページ)

巨大アートビジネスの裏側

2015年オークションでムンクの『叫び』が96億円で落札された。『叫び』は世界でいちばん著名な絵画であり、希少性、コンディション、そして美術史上の重要性など高騰する条件が揃っていたという。

アートは既に一大産業である。原点は描くのが好きだから、見るのが好きだから、という点からスタートしている。プロ野球やF1も同じである。

こうやって考えると人間の活動の原点は中学生のクラブに行き着くのかもしれない。絵、マンガ、スポーツ、文芸、ジャンルは何であれ、普遍性がある中でコモディティ化しないもの、この要素を満たした時世界が対象となる。

蛇足

ジャンルは問わない、必要なものは好奇心

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