毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アメリカのリベラルは何を読み間違ったのか?~『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか? 』西森マリー氏(2017)

 ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか? アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実 (星海社新書)

 

トランプ台頭、及びトランプ支持者を分析する本は既に数多く出版されていますが、その全てがリベラルな視点から書かれたもので、多くはまるで科学者が下等動物を顕微鏡で観察しているような上から目線の書き方になっています。(2017)

 

 

階級闘争

今回の選挙は、都会の消費者(多文化尊重、学歴重視のホワイトカラー)と田舎や工業地帯の生産者(額に汗して働くことを美徳としている信心深く愛国的な人々)の戦いでもありました。グローバル経済で消費者は得をして豊かになり、生産者は被害を被って生活が苦しくなったので、この大統領選はまさしく階級闘争だったのです。

アメリカは世界の警官か?

民主党派はアメリカは世界の中の一つの国に過ぎず、アメリカ人は世界市民の一員で、アメリカ政府はアメリカ国民に対しても世界の人々に対しても、金持ちに重税を掛けて富の再分配を行う義務があると思っています。

共和党派、およびブルーカラー民主党派は、アメリカは世界一すばらしい自由な国で、均等に与えられた機会をうまく利用できれば大成功を収められると信じています。

そして彼らは、世界一の偉大な国としてのアメリカの地位を守るためには、強い軍隊が必要だと思っています。(95ページ)

富に対する姿勢

民主党派の人々は、「そもそも金持ちは、何か悪いことをして小市民から搾取して金持ちになったに違いない」と信じています。・・・一方共和党派の人々は、「誰でも努力して一生懸命働き絶好のチャンスに巡り会えれば金持ちになれる」と立身出世のアメリカン・ドリームを信じています。(128ページ)

 

時代遅れの野蛮人か?

きっと日本に住んでいると、キリスト教を信じて中絶に反対し銃が生活の一部になっている人々は“時代遅れの野蛮人”としか見えず、リベラルなアメリカのメディアのいうことを鵜呑みにして、トランプ支持者はみんな低学歴、低IQ、人種差別主義者のバカだ、と思えるでしょう。

でもそれは、「真珠湾を攻撃し、従軍慰安婦を使い、イルカやクジラを殺し、靖国神社に参拝に行き、シリア難民を150人しか受け入れない日本の国民は、卑怯で、野蛮で、時代遅れの人種差別主義者だ」というのと同じくらい愚かなことです。(265ページ)

ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?

アメリカの都市に住む9割がリベラルだと言われている。著者は本書で「彼らはワシントン、ニューヨーク、LAに住み、逆の田舎の人々、ブルーカラーの労働者、農業従事者のことは理解できない、」という。都市に住むリベラルはグローバル経済の恩恵は受け、田舎や工業地帯の生産者はグローバル経済のマイナスに直面する。感情的な対立と損得の対立の構造がある。リベラルの牙城であるマスコミがトランプを批判し続ける底辺にはこの構図が横たわっている。

蛇足

自分の主張が正しい、と思い込むときそこに問題が発生する

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