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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

『モナリザ』の背景はなぜ荒涼とした風景なのか?~『ダ・ヴィンチ絵画の謎』斎藤 泰弘氏(2017)

 カラー版 - ダ・ヴィンチ絵画の謎 (中公新書)

斎藤氏はイタリア文学、特にダ・ヴィンチの手稿の翻訳・研究で知られる。『モナリザ』の 左右の背景はなぜつながっていないのか、そもそもなぜこんなに荒涼とした風景なのか……。(2017)

どう繋がっているか、分かる?

モナリザは上半身で背景の中央部分を遮って、見る者に向かって微笑みながら「わたしの背後で風景がどう繋がっているのか、分かる?」と問いかけている。実際、彼女の右側と左側に展開する風景がチグハグで、両者が彼女の背後でどのように繋がっているものか、これまで誰も納得できるような説明をしたことがなかった。(137ページ)

絵の背景に込めた意味

向かって右側では、アルプスのような山岳地帯を水源地とする川が、きわめて自然に蛇行しながら流れ下ってきている。それに対して左側では、山々や水に浸食されて倒壊し、水はその行く手を塞がれて、湖となって広がり、次いで近い将来、その堤防を食い破って湖を崩壊させ、その下流域に襲いかかって、地表にあるものすべてを洗い流すはずである(144ページ)

なぜこのテーマを選んだのか?

・・・この世の終末をめぐる問いは、あらゆる時代のあらゆる人間の心を捉えてやまない人類の永遠の問いである。しかし、とりわけルネサンスのヨーロッパ社会においては、この問いはより切実なものであった。彼らの世界観の根底をなしていたキリスト教思想は、この世の終末をーその時期こそ不確かながらも、その確実な到来をー予言していたからである。・・・世界の終末は、現代人を脅かす核戦争の恐怖と同様に、当時の人々を脅かし続けた脅迫観念だったのである。(180ページ)

ダ・ヴィンチの考えていたこと

彼の化石の生成過程についての地質学的考察は、この手稿においても続けられ、それらはすべてかつての海底が現在の山岳にまで隆起したことを証言していた。ところが、彼の静学的考察は、永久的な大地の隆起を否定して、最後には大地が再び水没することをはっきりと予言していたのである。(122ページ)

 

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16世紀当時の模写(背景がはっきり分かる)

プラド美術館のモナリザの模写、最も初期の作品と判明 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News

 

ダ・ヴィンチ絵画の謎

ダ・ヴィンチは20歳の時画家の工房の親方として独立した。彼は大学で学んだ学者ではなかった。イタリアのフィレンツェの山から出土する貝殻などの化石から大地の生成と消滅の理論に興味を持つ。ダ・ヴィンチは30歳頃当時の文化の中心地であったフィレンツェに移り、そこで宮廷お抱えの技術者として様々な活動に従事する。その間も常に大陸の生成の過程を研究し、ミラノ近郊の化石を収集分析し、自らの説を確立した。

ダ・ヴィンチは『モナリザ』だけでなく『受胎告知』、『聖アンナと聖母子と小羊』などの背景にも大地の生成と崩壊のモチーフを使っているという。

ダ・ヴィンチは絵画だけでなく、科学者・技術者として様々な活動をした。彼の活動は一つのテーマに貫かれていた。人類は大地が水没しては滅亡するとして、それまでの間どうやったら自分は人類の役に立てるのか?だからこそ絵画の主題はキリスト教であったとしてもその背景には自分の主張を描いていた。

ダ・ヴィンチから学ぶべきは、自らの頭で考え続けること、前例のない分野に挑戦すること、であろう。モナリザの背景はそのことを教えてくれる

蛇足

ダ・ヴィンチの主張はカトリック教会にとって受け入れられるものではなかった

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