毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうしてオリーブオイルが古代ギリシャの繁栄を支えたのか?~『スパイス、爆薬、医薬品、世界史を変えた17の化学物質』(2011)

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

著者のルクーターとバーレサンは化学の研究者、身近な物質の化学物質から見た世界史。(2011年刊)

 
オリーブ油

 

古代ギリシャの神話によれば、平和と知恵の女神アテナが槍で地面をつくとそれがオリーブの木となった。そこからオリーブは平和の象徴であり、食糧、燃料になる事で繁栄の象徴とされていた。

黄金の液体

 

 

オリーブ油には、高カロリー供給源という、食品としての明らかな役割がある。それに加え、この油は地中海沿岸に住む人々の日常生活において、様々な場面で使われた。オリーブ油を満たしたランプは、暗い夜の明かりだった。化粧品目的にも使われた・・・ギリシャの詩人ホメロスは「黄金の液体」と呼んだ。(278ページ)

 

オリーブ油の化学的側面~オレイン酸

 

 

この油が古代世界で珍重されていた理由も説明する。油は、脂肪酸の炭素-炭素二重結合の数は増えれば増えるほど、酸化すなわち劣化する傾向が増す。オリーブ油中のポリ不飽和脂肪酸の割合は、他の油よりずっと低い、普通10%以下である。このことから棚に置いていてもどんな油よりも長持ちする。(288ページ)

 

オリーブ油と交易

 

 

オリーブ油に抗酸化剤として天然の保存料が含まれていることは、古代ギリシャの油商人にとって非常に重要なことであったろう。・・・紀元前6世紀、アテネのソロンがオリーブを無断で切ったら処罰するという厳しい法律を制定するとともに、輸出できる唯一の農業製品としてオリーブ油を指定したからだ。(289ページ)

 

 

オリーブ油が古代ギリシャにもたらした富によってこそ、現在なお評価されている多くの文化的事物が生まれたのである。今日の西洋文明のルーツは、古代ギリシャの政治文化によって育まれた概念の中に見出す事ができる。・・・この社規の繁栄は、多くがオリーブ油の交易によるもので、教育や都市機能がそれを補った。(298ページ)

 

ギリシャはオリーブを得て農地を失った

f:id:kocho-3:20150420065020p:plainオリーブ - Wikipedia

 

古代ギリシャはオリーブ油の生産に集中した。その結果ギリシャのぶどう畑、森はオリーブ畑に代わった。オリーブの木は「表土より深い所から水を吸い、表土を保持する機能がない。泉は徐々に枯れ、土は洗われて畑は浸食された。」(289ページ)という。古代ギリシャはオリーブ畑によって農地を失なっていた。

ギリシャは交易の鍵を握っていた

 

我々にとってオリーブオイルはイタリアンなどに使われる、健康に良い油というイメージを持っている。今から2500年前、抗酸化機能を持つオリーブ油は「非常に好ましい分子で、世界的に見て産地が偏っているもの」だった。ギリシャは現代で言うなら、健康食品であり、化粧品であり、エネルギー源である、という高付加価値商品を一手に握っていたのである。だからこそ知恵と平和の象徴でもあると気付く。

蛇足

 

最近オリーブ油を使いましたか?

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